はじめて、しましょ★ - 骸編 -
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「でですね、初めての撮影もハヤトは台詞を間違えないで言えたんです!」
「ふーん…」
楽しそうなハヤトの一日の報告に、しかし雲雀は不機嫌そうな顔で応えるのみだった。
いつもなら笑って相槌を打ってくれるというのに。
「あの…雲雀さん?ハヤト…何か悪いこと言いました?」
「あ、いや…なんでもないんだよ?ハヤト…」
落ち込むハヤトに雲雀は慌てて笑顔を繕う。いけない、彼女に非はないのに。
「ただ…あの骸って奴が気になってね…」
「え?」
骸さん…ですか?とハヤトは首を傾げる。
骸。ライバル会社の人間とはいえ彼は紳士的な男だった。
にこやかな笑顔はハヤトを落ち着かせてくれて。
ハヤトが台詞を間違えないで言えたのも本番前に緊張するハヤトに骸が「大丈夫ですよ」と笑いながらいってくれたことも影響しているだろう。
「骸さんはとってもいい人ですよ!」
にぱっとしながらハヤトは応える。しかし雲雀の顔は少し不機嫌に戻る。
「そうだといいんだけどね…」
「雲雀さん…?」
呟いた二人の言葉が溶けて消え、暫く経ったのち雲雀は思い出したようにハヤトに声を掛けた。
「―――…そういえばハヤト。そのドラマってどんな話なの?台本持ってる?」
「あ、はい…―――これです。あ、現本も頂いてますよ」
「うん。ありがとう」
ぱらぱらと目を通していく雲雀。しかし後半からページを捲る手がゆっくりになっていって…そしてある一ページで止まる。
「………っ、ちょ、ここまでやるの!?」
「へ?」
がたんと音を立てながら席を立つ雲雀。ハヤトも思わずそれに倣う。
しかし雲雀の目にハヤトは既に見えてないのかきっとある一点を睨みつけ、そこへと走る。ハヤトも何故かそれに倣う。
雲雀の足は速くあっという間に二人の距離は遠ざかり、とうとうハヤトの目から雲雀の姿が消えてどうしようかと少し悩む。しかしその悩みは両断されることになる。
「綱吉―――!!!」
珍しい雲雀の大声。と言うかハヤトは初めて聞いた。そしてその名が叫ばれると言うことは雲雀は社長室だろう。ハヤトはそこまで急いだ。
「ちょっと、これどういうことさ!」
「え、お、あ?え、なになに雲雀。キミが大声だなんて珍しくない?え、どうしたの?」
流石の沢田社長も雲雀の剣幕に驚いている。しかし雲雀は気にせず、
「何もなにも今度のドラマのことだよ!なに、キミこれを承諾したっていうの!?信じられない!!」
雲雀の言う、これ。雲雀はハヤトに借りた本のあるページを指差して。
「このドラマ中盤にベッドシーンがあるじゃない!そんなのまだハヤトには早い!いや、ハヤトにそんなシーンは一生させちゃ駄目!!」
なんだか初期の頃のとは考え付かないほどの剣幕で沢田社長へと怒鳴り込む雲雀に、社長もまた驚く。
「な、ベッドシーン!?何それオレ知らないよ!?―――ったくこっちが出来たばかりの会社だからって舐めやがって!」
「早くそのシーン削るよういいなよ!そうでなければハヤトの主演は断って!…いいから早く!」
「分かってるって!えーっと番号は…いや、面倒だから向こうまで行ってくる!雲雀は連絡しておいて!」
なんだか凄い勢いで話を進めている二人に、ハヤトはなんだか不安になってくる。また自分のせいでみんなに迷惑を掛けているのだろうかと。
「あ、あのっ」
堪らずハヤトは声を掛ける。二人は同時に見て。そして驚く。
「な、ハヤト!?」
「い、いつからいたの…?やば、気付かなかった…」
割と最初からいたのだが全然その存在を認めてもらえなかったことにショックを受けるハヤト。しかし負けず、
「あの…そんな、わざわざ話をせずとも…ハヤトが頑張ればそれで済む話ですから…」
「「なぁ!?」」
驚く二人。しかしそれも無理はない。ハヤトは今、自らベッドシーンを希望したのだ。
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