はじめて、しましょ★ - 骸編 -
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「クハハハハ。それは災難でしたねぇ」

「わ、笑い事じゃないんですっ…その、骸さんは…知ってたんですか?」


それはそのドラマのスタジオの控え室。

ハヤトは骸と一時の団欒を楽しんでいた。本日の話題は今朝後半から違うシナリオの台本を渡された経緯について。

ハヤトは当事者だからその事態になっても特に驚くこともなかったが他のみんなは違って。戸惑いを隠せてないようだった。

…ただ一人、六道骸を除いては。


「いえ、知りませんでした。ただハヤトくんの会社の社長が凄い剣幕でこのドラマのプロデューサーにそのシーンを除くよう言っていたシーンを目撃しまして」

「あ、あうぅ」


やはり色んな人に迷惑を掛けてしまったと、ハヤトは嘆く。ああ、やっぱり無理してでもハヤトが…いややっぱり無理ですごめんなさい。


「けれど、やはり僕達の年代でそんなシーンは問題があったと思いますから。結果的にはいい方向へと進んだと思いますよ?」

「…だと、いいんですけど…」

「ええ。でも僕個人の意見としてはちょっとだけ残念だったんですけど」


はぁ…とハヤトは流しそうになって。でもちょっと考えてん?ってなって。えーと…っと考えて…


「えぇぇえええええええ!?」


そのベッドシーンの相手役が骸であることを思い出して。思わず大声を上げてしまった。


「クハハハハハハ。やっぱり可愛いですねぇハヤトくんは。虜になってしまいそうです」

「と、と、と、と、虜ってなんですか!?」

「それは。もちろんですね…」


ずいっと骸は身を乗り出して。ハヤトに近付いて…


「近い」


そんな声が聞こえた気がした。そしてそれに意識を向けるよりも前に後ろの方へとハヤトは引っ張られて。


「クフフ。おやおや貴方ですか。やはりちょっとばかり過保護なんじゃありません?」

「…なんとでもいいなよ。あとで後悔するよりよっぽどまし」

「雲雀さん?」


声はすぐ真上からしたから、ハヤトは見上げてその人物を見る。そこにいたのはやっぱり雲雀で。


「お疲れ様です、雲雀さん!!」

「うん。お疲れハヤト。………いい?ハヤト。必要時以外あいつに近付いちゃ駄目だからね?」

「クフフ。本人の前で言うのって虐めですかこれ?」

「虐め程度でへこたれてくれればまだ可愛げすらあったんだけどね」

「…?え?はぇ?なんで近付いちゃいけないんですか?」


危機感ゼロなハヤトはまったく理解出来てない模様で。仕方無しに雲雀は説明してあげることにした。


「そうだね…例えば、飢えた狼の前に仔兎を放っちゃ…いけないよね?」

「そ、それは駄目です!うさぎさんが食べられてしまいます!!」

「うん。よく出来ました。つまりはそういうことだよ、ハヤト」

「???」


やっぱりよく分からなかったハヤトであった。


「ていうか貴方。お仕事の方はいいんですか?」

「今やってるよ」

「え?」


仕事中。しかし雲雀はハヤトを抱き締める以外、何もしていないように見える。


「ハヤトに悪い虫がつかないように見張ること。これも僕の仕事の一つになったから」

「はぁ…それはそれは」


やっぱり過保護ですねぇ、と言う言葉を骸は喉のぎりぎりで堪えて。


「ご苦労様です」


とだけ返しておくことにした。


「………さて。そろそろ時間です。ハヤトくん、参りましょう。…雲雀さん、まさかドラマの中にまでは来ませんよね?」

「出来れば行きたいんだけどね。ハヤトの仕事の邪魔はしないよ。…誰かが邪なことをしない限りはね」


最後の台詞はかなりマジな感情が込められていた。


「では、そうならないように祈っておきましょう。それでは僕達はこれで」


雲雀の目から逃げるようにと、骸はハヤトの手を引いてスタジオを後にした。