はじめて、しましょ★ - 骸編 -
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そうして日々を過ごしているうちに、ドラマも中盤というところまで来た。

ハヤトも骸も慣れてきて。骸に至っては所々でアドリブを入れてくるようにまでなっていた。

今日のシーンは主人公こと骸がヒロインことハヤトと悲痛な別れを告げるシーン。主人公は理由を話さぬままヒロインと離れる。


「―――どうして…なんですか!?わたしが…至らないせい、なんですか…?」


涙を流しながらハヤトは骸に問い掛ける。ハヤトの身体は小刻みに震えていて。


「…違います、違うん…です。僕は、―――僕だって、貴方と別れたくなんてないんです」


対する骸も辛そうに、悲痛そうに顔を歪めて。そんな骸にハヤトはなら何故と責め立てる。骸はハヤトを抱き締めて。


「分かって下さい。…これしか、方法はないんです」


抱き締められたまま、ハヤトは骸を見上げる。その顔は不安そうに。


「大丈夫です。また逢えますから。…それまで、どうか耐え忍んで下さい」


骸はそう言うと、ハヤトの頬に触れるだけのキスをして。その場から立ち去った。

ハヤトはその後姿を、ずっとずっと見続けていた…


「はいカーット!!」


暫くして監督の声が響き渡った。辺りの空気が弛緩して。骸も戻ってくる。


「骸くーん。困るよ勝手にキスシーンなんてやっちゃあ。沢田社長にきつく注意されたんだから」

「クフフ。申し訳ありません監督。でも役になりきるとあそこでのキスは必然なんですよ」


雲雀さんも丁度席を外していたことですし、と骸は無邪気に笑って。…けれどその笑みは、次の瞬間には凍りついた。


「へぇー…?今とても興味深いことを言ったよね。…役になりきると、何が必然なんだって…?」


骸が振り向くと。

そこにはにっこりと…純なお嬢さんが真っ直ぐから見たら即恋に落ちてしまいそうなほど綺麗な笑みを浮かべた雲雀がいて。

それを見た骸は思った。

殺られる、と。


「―――言ったよね。ハヤトへの必要以上の接近は許さない、って」


雲雀の笑みが崩れる。けれど楽しそうな態度は変わらない。ああやばい。殺される。骸はそう直感した。


「ま、待って下さいよ。これは役で演技なんです。ハヤトくんだってそのことは重々承知で…」


と、助けを求めるように骸はハヤトへと視線を向ける。雲雀も続いて向ける。ハヤトがそうだと同意してくれれば取り合えずこの場はどうとでも切り抜けられる…が。


「……………」

「…ハヤトくん?」


静かに骸が再度問い掛けるもハヤトに反応はなし。試しにもう一度呼んでみるも相変わらず。

スタッフのランボが駆け寄って。目の前で手を振って―――…


「ショックのあまり固まっちゃってるようですー!!」

「………」

「………」


…にっこり。雲雀はまたも笑顔を浮かべる。けれどその目は笑っていない。


「さようなら。六道骸。キミのことはテレビで話題になった時だけ思い出してあげる」

「わー!タンマタンマなんですよ雲雀さん!どうかお許し下さい!ていうかそのトンファーどっから持ってきたんですかー!?」


逃げる骸に笑いながら追いかける雲雀。そして刺激が強すぎたのか未だ固まっているハヤト。

けれどそんなみんなの努力の甲斐があったのか、そのドラマはかなりの好反響を周囲に及ぼした。