後日談
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骸が獄寺の自室に進入する同時刻。
雲雀は獄寺の自室へと足を運んでいた。
今日こそ獄寺を休ませようと。無理をしてでも休ませようと。
そう行きこんで…けれど不意にその表情が。歪む。
開いたままの扉の向こう。その先に雲雀の天敵がいたから。
しかもその天敵は、意識の無い獄寺に近づいて。…笑いながら彼に触れようとしている。
制止の言葉なんて必要無かった。
そもそも彼…六道骸は止めろと言われた所で本当に止めるような人種ではない。むしろ嬉々として、見せ付けるように悪戯を仕掛けてくるのがオチだ。
そんな未来。雲雀は望んでいない。だから実力行使で止めに出た。
常に仕込んでいる鉄の塊を思い切りぶつけようとする…が。向こうも雲雀の接近には気付いていたようで。難なくかわしてみせる。
「クフフ…どうしましたか雲雀くん。当たったら危ないじゃないですか」
「隼人から離れて」
雲雀は不機嫌な声色を隠そうともせず、敵意を表している。
けれど骸は依然と笑っている。雲雀なんて敵でも邪魔でもなんでもないというように。
「おかしなことを仰いますねぇ雲雀くん。どうして僕が隼人くんから離れないといけないんですか?」
無垢な表情で笑ってみせる骸。それが雲雀の殺意を膨らませる。
ぴりぴりと痛みすら発する空間。それにあてられてか。
「ん…」
部屋の主。獄寺隼人が目を覚ます。
骸は笑いを笑みに変え。
とん、といつしか手にしていた槍を床に叩き。
同時に辺りに藍色の霧が薄く充満する。
薄っすらと眼を開いて。状況を把握しようとする獄寺。
…その眼から、はらりと透明な雫が一つこぼれた。
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目の前には愛しの彼の幻影。
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