彼の隣に立つ方法
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時刻は夕暮れ。

辺りには誰もおらず。

オレの目の前には夕日に赤く照らされた獄寺が膝を付いている。


ああ、あいつはきっと、疲れてバランスを崩して倒れてしまったんだ。

オレは手を貸す。すると獄寺は酷く驚いたかのような顔をして、オレを見る。

獄寺はオレの手を取る。細い、やわらかい手だった。指先は冷えていた。

獄寺がオレに問い掛ける。どうして優しいんですか?と。


…一体何を言ってるんだこいつは。

オレがお前に優しいのはいつものことじゃないか。


だと言うのに、獄寺はどこか浮かない、納得いかない顔をしていた。口をへの字に曲げて、不満を露にしている。

獄寺が口を開く。教えて下さいとオレに言ってくる。オレは獄寺隼人ですか、と。


何を、当たり前のことを。

お前が獄寺以外の誰だと言うんだ。


そう思って、答えたのに。

何故か獄寺の目が大きく見開かれて。

そうですかと、一言。


諦めたような顔で、"こいつ"は獄寺隼人ですか。とまるで自分を他人のように。

悲痛そうな顔で、"あいつ"が獄寺隼人ですか。とまるでここにはいない誰かを憎むように。

涙を流しながら、"オレ"の居場所は…あなたの隣じゃなかったんですね。とまるで何かを諦めるかのように。


―――ああ、そうだ。そうだった。


ここには、この世界には、目の前にいる獄寺ともう一人。獄寺によく似たあいつがいるんだった。

そう、そう。そうだ。そうだった。一度思い出せば次から次に忘れていたことがぽろぽろと出てくる。

獄寺はこの場にはいないはずなんだ。獄寺はあの病室で起きない眠りについているはずなんだ。

ここにいるのは、この場にいるのはもう一人の方のはずなんだ。決して本物の獄寺ではなく、しかしならば先程の問いの意味は?

オレがその意味に気付くよりも早く。


「さようならリボーンさん」


獄寺の声に、正気に戻される。

獄寺はオレの銃を握っていた。オレの銃を自分の顔に向けていた。


「…どうか、オレの偽者と末永く」


そう言ったときの"獄寺"の顔は、

とても、辛そうだった。

それはまるで、大切な誰かに裏切られたかのように。


誰かって誰だ?

オレだ。


銃声が鳴った。