身分違いの恋
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オレはあの人と別れてから、微動だに出来ずそのままその場所に座っていた。恐らく最後の、あの人との思い出の場所に。

どれだけの時間が経ったのかも分からなかった。ただあの人と別れたときは明るかったはずの外は暗くなっていた。


あの人は来ない。

当たり前の事実。


それだけのことが…とても悲しくて。オレはその場で声を殺して泣いた。


あの人に抱いていた感情が恋じゃないなんて、そんなわけがない。そう声を大にして叫びたかった。

オレはあの人が好きだ。誰になんと言われようと、誰になんと思われようと。

…その気持ちを、もう表に出してはいけないのだとしても。


次の日から、オレとあの人は他人になった。

道すがら擦れ違っても目も合わせない。当然会話もない。


とても辛かった。


そしてあの人は日本へと飛んだ。次期10代目の指導役として。

もうあの人と会うこともないのだろう。そう、諦めを持っていたある日。あの人から呼び出しが来た。

不覚にも鼓動が高まったのは、誰にも内緒だ。昔、あの人が仕事をサボってオレに会いに来てくれたときのように。

日本に飛ぶ寸前に、また呼び出されて「初対面のように振舞え」と言われた。


…分かってる。そんなこと、言われなくとも。

オレはもう、あの人の足枷になりたくはないのだから。


言われた通りに、まるで初めて会ったかのように振舞った。

そうしたら…あの人は。


「ああ、オレも会うのは初めてだな」


正直に言いましょう。

泣くかと思いました。

酷い奴ですよねオレは。

貴方に勝手に別れを告げておいて。なのにまだ好きなんです。

…むしろ、別れを告げたときよりも一層好きになっているような。


日本に呼ばれて、身体の距離は縮まったけれど。心は遠ざかった気がしました。


だって貴方は、オレを見ないのですから。

だって貴方は、オレに冷たいのですから。


けれどオレも、貴方を頼りにするわけにはいきません。

オレはひとりで頑張りました。

それが…貴方と恋人だったときのオレが、貴方と最後に約束したことなのですから。

とても辛い日々でした。それが10年続きました。


そして…