Roman - 見えざる呪い -
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「………、」


強い痛みに、灼かれる。

そんなときに見る幻は一番腹立たしい。


オレに殺された奴なら、さっさと死んどけ。


いくつもの戦場で、いくつもの命を奪ってきた。

いくつもの争いを廻り、いくつもの屍を積み上げた。

この幻覚はそのときの奴らなのだろうか?


オレが加害者で、お前らが被害者だとでも言うつもりか?


とんだお笑い種だ。


死にたくなかったのなら、マフィアや殺し屋など選択せず別の道を選んでいればよかったのに。

なのに彼らはこの道を選んだのだから、自業自得だ。

それでもなお、自分たちが被害者だと主張するというのならば。


オレだって…被害者に入るんだぞ。


自分が望んでこんな身体になったとでも思ったか。

誰がなるか。呪われた身など。アルコバレーノなど。

最初から自分がヒットマンの道を選んでいたと思っているのか。


単に、この道以外を奪われただけだ。


こちとらこう見えて、若い頃は――今の外見の方が若いが――青臭い夢だって持っていたし、追いかけてすらいた。

それを、奪われた。

何もかも奪われた。喪った。そうして彼の最初の人生は終わり、今の最低な人生が始まった。


「………」


痛みは続く。幻覚も消えない。

それどころか…彼に纏わり付く腕がいつしか別の人間のものに変わっていた。

ごつごつとした男のものではない…華奢な、細い女の指。


それにはどこか、見覚えがあった。

振り返ると…初めて、腕以外の幻が見えた。

そこに見えたのは、かつての愛人の姿。