標的167 その裏側
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…あの、すいませんリボーンさん。


「ん?」


たすけてください。


オレがそう言うと、リボーンさんはにやりと笑ってくれて。


「ああ。構わないぞ」


そう言って…動けないオレをひょいと持ち上げて。

…え?

ぎゅって…抱き締めて…くれて。

…まさか、リボーンさんに抱き締められる日が来るなんて。

体格の差で…どうしても、出来ないって。そう思っていたけど。まさかそれが覆される日が来るなんて。


うわー…


リボーンさんの腕の中は、子供なのに低い体温で。

小さな身体なのにしっかりしてて。手の平は少し硬くて。

でも確かなぬくもりと、鼓動が聞こえてきて。それに安心して。

気付いた時にはオレは…リボーンさんに抱き締められながら、眠りに落ちていた。



真っ暗だった。

あたり一面暗闇だった。

ここはどこだろう。

オレの姿は猫のまま。


リボーンさん?


リボーンさんはどこだ?

リボーンさん、リボーンさん。

オレはリボーンさんを呼ぶけれど、リボーンさんは現れない。

みーみーみーみー鳴いてると、ごごごごごご。と、地響きが。


「はぅうう!!プリティキャッツちゃん発見ですぅううううう!!!」


ハルだった。

巨大なハルが突如として現れた。

逃げる逃げる。オレは逃げる。

けれどオレの行く手を遮るように、目の前に別の人間が現れる。


「…ねこさん…」


クロームだった。

あちこち吐血でかそれとも何かあったのか血まみれで。生気のない眼でオレを見て。手を差し伸ばす。


だから怖いって。


逃げる逃げる。オレは逃げる。

けれど逃げた先には先客がいた。そいつはオレを見つけるときゅぴーんと眼を光らせた。


「にゃんこ…!」


だからにゃんことゆーなと。


ていうか。気付けばオレは追い詰められていた。

逃げ場がない。

奴らはじりじりじりじりとオレににじり寄ってくる。

なんていうか、マジ怖いっす。

うわ、やめ…誰か…


「うるせぇぞ」


頭に衝撃と、目の前にお星さまがいくつか飛んだ。

ぐわんぐわんと頭が揺れる。痛い。すげー痛い。何事だ?


「目ぇ醒めたか?」

「はい…。って、あれ…リボーンさん?」

「ああ」


気が付くと、そこはオレの部屋で。窓に映る姿は人間のもので。


…やっぱり夢オチか。


はぁ、と盛大に溜め息を吐く。………正直。怖かった。あと何度も死ぬかと思った。


「お前ひたすらうんうんうなされていて、うるさかったぞ」

「えっと…すいませんリボーンさん」


謝りながら、ふと疑問に思う。

なんでリボーンさんがオレの部屋に?


「オレがお前をここまで運んできたからな」

「???」


いまいち意味がよく分からない。

確かにリボーンさんほどの握力があればオレを引きずるのも動作もないことだろうが…それにしてはオレの身体は別段どこかにぶつけたような痛みはなかった。

それにオレは部屋から出た記憶もない…


どういうことですか?


そう聞こうとする前に、部屋の扉が開けられた。


「あ、獄寺くんとリボーンくん発見。あのね。さっき迷い子猫が…」


ヤメロそれ以上聞きたくないし知りたくもない。

けれど無情にも笹川はオレとリボーンさんに携帯の画面を向けてくる。

…夢じゃなかったのかよ畜生。


画面の中では銀の毛並みに碧の眼をした小さな子猫が、毛布の上で丸くなっていた。


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写真じゃ可愛いかも知れないけど、これ追い詰められて疲れて目を開けたまま気絶してるだけだからな。