喜ばしい一日
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「♪」


その日。

獄寺隼人は上機嫌だった。

それはつい先日敬愛する10代目より与えられた禁煙指令が解かれ煙草を返してもらったことも関与している。

が、それよりも…更に獄寺の心を躍らせている出来事がひとつ。


本日の日付。

6月9日。


それは…その日は……



「ご機嫌よう隼人くん!!」



うわあ。

ハイテンションな骸が現れ、獄寺はドン引きした。


「これはこれは隼人くん。ご機嫌麗しゅう」

「おお…お前は……なんだ、平和そうだな」

「ええ、今日は素晴らしい日ですから!!」


素晴らしい日。その言葉に獄寺もちょっと反応する。


「…まあ、そうだな。今日はいい日だ」

「でしょう!?」


なんだこいつのこのテンション。

獄寺は更に引いた。


「いやあ、流石隼人くんは話が分かりますね!クロームとか犬とか千種とかM・Mとかはまったくの無関心だったというのに!!」

「お前全然懐かれてないんだな」


これだからド変態は。少しは我らが10代目やリボーンさんを見習えってんだ。という目で獄寺は骸を見る。


「クフフ…その蔑むような目……いいですねえ。ぞくぞくしちゃいます」

「悪ぃ。お前黙って消えてくれねえかな気持ち悪いから」


骸はドエムだった。獄寺は悪寒を感じた。


「…で?今日は何が素晴らしい日なんだ?」

「おや。隼人くんも同意してくれたじゃないですか」

「多分オレの理由とお前の理由は違う」


ちなみに獄寺が本日うきうきしているのは今日というこの日。6月9日はネッシーの日だからだ。

ネッシー。UMA。未確認生物。そのロマンに獄寺の心は踊り胸はときめく。

しかし骸もUMA愛好家というわけではあるまい。獄寺は自分の趣味が周りに理解されづらいものだと理解していた。時代が追いついていないのだ。まったく嘆かわしい。


「ふ…実は!今日は!僕の誕生日なのです!!」


無駄にポーズを決めつつ骸は宣言する。超楽しそうだ。


「ほお…中々いい日に生まれてんじゃねえか……」


ネッシーの日に生まれるたあこの野郎ちくしょうちょっと羨ましいじゃねえか。と獄寺は少し思った。


「でしょう?僕にお祝いの言葉とプレゼントを贈ってもいいんですよ?」

「おめでとう。ほれ」


獄寺は棒読みで祝いの言葉を言って、適当にポケットを探って出てきたチョコレートを骸にあげた。



「あ…ありがとうございます!!!」



骸は超感激した。

ここまで喜ばれるとは獄寺も予想外だった。適当にあしらったというのに。



「初めてまともに祝ってもらえた…!!」



「本当にお前は慕われてねえんだな…」


獄寺は骸にちょっと同情した。



「それで、隼人くんはどうして今日がいい日だと?」


軽く聞いた骸に、獄寺の中に眠る何かに火が点いた。



「よくぞ聞いてくれた」



骸は何故だか嫌な予感がした。

そしてその予感は的中し、骸は約三時間ほど獄寺のUMAトークに付き合わされた。

ようやく解放された骸はやつれ、獄寺はつやつやのほくほく満足笑顔で別れたという。


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結論としましては…隼人くんに生半可な覚悟でUMAの話をしては…いけないということでしょうかね…