6月の花嫁
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「…10代目?あいつらは――」


オレは見かけない、10年付き合いのあいつらの姿が見えないことに疑問を覚え、聞こうとする。―――と。


バン!!


扉がまた大きく開かれて。


「その結婚待ったー!!」


そんな。聞きなれた叫び声が響いて。


「や…山本?」

「やっぱり来たか…山本」


10代目が嬉しそうに。楽しそうに。笑う。…滅茶苦茶怖いんですが。


「ようこそ山本。オレと隼人の結婚式へ。…来てくれて、嬉しいよ」

「へ…よく言うぜ。ツナが、いきなり…十日も、日本へ、帰国許可を出すなんて。おかしいと思った」


山本は余程急いできたのか、途切れ途切れに言葉を発した。

けれど次の瞬間には、息を整えて。既に刀化した山本のバットを構えた。


「獄寺を離せ。結婚なんて、オレが認めねぇ」


お前はオレの親父か。


そのことは10代目も思ったのか、大げさにため息を付きながら山本を指摘する。


「…あのねぇ山本。そんなこと山本に言う権限なんてないでしょ?…ちなみに、オレは隼人の父親から許可貰ったから


いつの間にっ!?


「そんな訳で、山本はそこで大人しく見ててね?…オレと隼人の結婚式をね」


わざわざそこを主張しながら、10代目は席へと歩いていく。追いかけようとした山本は警備員に取り押さえられていた。

…何やってんだ、あいつ。

そんな訳で何故か式が始まった。



「…今日はオレと隼人の結婚式に来てくれて本当にありがとう。今日からオレはボンゴレ10代目としてだけでなく、隼人の夫としても生きていきます」


ヒューヒューと野次が飛んでくる。10代目は照れていた。


「それでは、今度は親御さんからの挨拶です」


そうハルが言うと、スポットライトが現れる。出てきたのは、10代目のお母様。


一般の方がここにいて良いんですかっ!?


お母様はオレに気付くと笑いながら手を振って。そしてマイク台の上に立つ。


「――今日は息子の結婚式にお越し下さり、誠にありがとうございます。…ツナ、獄寺くんを幸せにしてあげるのよ?」


10代目がもちろんと言い、オレの肩を抱く。また野次が飛んできた。


「獄寺くんには知り合った頃からお母様と呼ばれ、いつかはこんな日が来るんじゃないかと楽しみに待ってたの。夢が現実になって、本当 に嬉しいわ」


…お母様。


「獄寺くんみたいな娘がずっと欲しかったし。…獄寺くん、今度一緒にお料理を作りましょうね」


はい…とりあえず、オレ男ですけどね!!

お母様はそれから少しこれからの事を話して、マイク台を後にした。拍手が巻き起こる。


「…ありがとうございました。続いて、獄寺さんのお父様からのご挨拶です」


―――えっ!?親父来てるのっ!?


屋敷を飛び出て以来、あそこには帰っていない。もちろん親父にも会ってはいない。

出てきた親父は…最後に見た親父よりも、当たり前だけど10年分老けてて。

まさか、こんな形で対面することになるだなんて…


「―――隼人」


親父が。10年以上会わなかった親父が。オレの名を呼ぶ。


「お前が私の元を飛び出て、もう10年以上が経ったが、まさかこんなことになるとは夢にも思わなかった」


ああ、うん。 オレもだ。


「あの時はお前の幼稚な行動を愚かだと笑ったが、しかしあの行動があったからこそ、お前はボンゴレ10代目に嫁ぐなんて大挙を遂げたんだな」


あーうん。人生何が起こるか分からないよな。


「私はお前の父親であることを誇りに思う………隼人、綺麗だぞ」


「嬉かねぇよ!!」


思わず叫んでしまったが、10代目は気にした様子もなく笑っていた。