Family.
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「シャマ…!」
「取り乱すな」
うろたえる獄寺に、シャマルはあくまで冷静。どちらが死にそうなのかも分からないぐらいに。
「あー…そっか。お前。もしかして身近な奴の死。初めてか」
シャマルにそう言われて、獄寺は怯む。
…そういえば、そのとおりだ。
名前も知らない奴の死ではない。口頭で聞いた者の死ではない…身近の人物の、目の前での死。
「…黙ってろ!とにかく、医者だ医者!!」
「だから落ち着け。医者はここにいる。オレのことはオレが、よく分かってる」
「………っ」
「この程度で、取り乱すな」
今にも死にかけているシャマルは、毅然としていた。覚悟の差だった。
「お前がそんなに情けないと、オレが安心出来んだろう」
「馬鹿野郎!!こ…んなときまで、保護者面しやがって…!」
「保護者面?」
心外だ。とシャマルは呟いた。
「オレとしてはもーちょい。親密な関係のつもりだったんだけどな」
そんな関係、作らないつもりだった。
そんな繋がり。作らないつもりだった。
「お前は、」
この日が来ることは分かっていたから。
だから女とも一夜限り。子供だって残さなかった………のに。
「オレの、」
いつからか、シャマルは獄寺の師となって。
それがいつの間にか、弟が出来たような感覚になって。
それがいつしか、父親代わりになって。
総して―――
「家族の、つもりだったんだけどな」
「―――!!!」
獄寺が息を呑む。シャマルの力が抜ける。獄寺の目から一粒の滴が零れる。シャマルの反応はない。
「ば…かやろう…!!」
その声は震えてた。けど、もう関係なかった。シャマルにはもう届かない。
「なんで…こんなときに!そんなこと…!!」
シャマルはもう動かない。掴んでいる手に力が篭ることも、もうない。
その代わりのように獄寺はシャマルの手をぎゅっと握った。冷たい手の平。もう握り返してはくれない。もう本心を伝えることも出来ない。
オレもそうだったなんて、そんな一言でさえも。
…あるときはシャマルを兄のように見ていて。
あるときはシャマルを父親のように見ていて。
またあるときは師として見ていて…
総して、家族のように見ていたと。
ずっと頼りにしていたと。
大好きだったと。
…もう、言えない。伝わらない。
暫し、獄寺はシャマルの手を握ったまま俯き…
そして獄寺が次に顔を上げたとき、その目の涙は止まっていた。
真っ直ぐに、前を見ていた。
嘆くのは止めた。
悲しむのも止めた。
シャマルが望んでいるのはそんなことではないから。
取り乱すな。
―――オレが、安心出来んだろう。
シャマルはそう言った。ならば獄寺はそれに従う。
…家族の期待には、応えたかったから。
だけれどこの後、
運命とはなんとも残酷なもので、それから遠く離れてない日に彼の尊敬している人間が殺される。
それは獄寺が命をも捧げたと言っても過言ではない、沢田綱吉10代目。
本来ならばその日の内に、獄寺自ら命を絶っていたとしてもおかしくはなかったのだが、
運命とは皮肉なもので、シャマルの死こそが獄寺を生かすこととなる。
シャマルの言葉が、獄寺を生かすこととなる。
だけれどそれも。
今の獄寺は知らない話。
家族を亡くしたばかりの彼には、遠い話。
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血の繋がりはなくとも、二人は本当の家族だった。それは誰にも否定出来ない。
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