あなたへ贈る偽りの日々
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- 患者 獄寺隼人の場合 -
…冬の日差しが静かに室内に降り注ぐ。
室内にはひとりの青年。彼は寝具に寄り掛かりながら窓の外を見ていた。
空は晴天。木々には葉の代わりに白い雪が花を咲かせ、それは地にも続いていた。
そうして彼が外の景色を楽しんでいると…聞こえてくるノックの音。
応えるよりも前に開かれる扉。彼の視界に飛び込んできたのは恋人の姿。
「…来てくれたんですね」
微笑みながら、彼は言葉を走らせる。
「嬉しいです。リボーンさん」
「…あまり外に身を晒すな。狙われるぞ」
彼…獄寺の言葉には応えず、リボーンは寝具の横に置かれていた椅子に座る。
「大丈夫です。この窓硝子防弾ですしそれに…その、ほら」
もうすぐいなくなる人間を、わざわざ狙うような輩はいませんて。
くすくすと笑いながら少し咳き込む獄寺。それは中々収まらなくて。
「…ん……すいません、リボーンさん」
「構わん」
「あ…空気悪くないですか?今窓を開けて換気を…」
「獄寺」
窓の枠へと伸ばされた手を押さえ込み、リボーンは獄寺を寝具へと戻す。
「いいから大人しく寝ていろ。この時期の風はお前の身体に障る…そもそも、少し動くだけでも辛いはずだ」
「…なんというか…やっぱりリボーンさんには全てお見通しなんですね」
「当たり前だ」
あっさりと言い放つリボーンに、再度静かに笑う獄寺。けれどまた咳き込んで、咳き込んで、咳き込んで…口元を押さえている手からは赤いものが流れて―――…
リボーンはすぐに獄寺を寝かせ、口元を拭ってやり、医者を呼んだ。
シャマルと入れ違いに獄寺の病室から退室するリボーン。
その彼がどこか辛そうに見えるのは…それは果たして気のせいなのだろうか。
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