あなたへ贈る偽りの日々
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- 医師の独り言 -


…ああ、言えなかった。

どうしても言えなかった。

何度言おうと思っただろう。何度真実を教えようかと悩んだだろう。

けれど言えなかった。

…何も知らないままいってしまった方が、あいつにとっては救いになるんじゃないだろうか。

そう思うオレは逃げているのだろうか。

酷だと知っていながらも、全てを教えた方が…あいつの為になるんじゃないだろうか。

そう思うオレは間違っているんだろうか。

全てを知っている苦痛を誰かに押し付けて、楽になりたいだけなんだろうか。

…今日もまた言えなかったことを「あいつにそう頼まれたから」と言い訳するのは…やっぱり逃避だろうか。

なんにしろ決まっている唯一のことは…オレは自分の息子も同然なガキが死ぬのを…ただ黙って見ている事しか出来ないってことだ。

それも…二人。

―――――畜生。