獄寺ハヤトの暴走
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「ん…ふ、ぁ…」
そうして出社したはいいが、状態は酷くなるばかりで。今では歩くだけでふら付きを感じるほどで。
「ぅ…ぁう」
とうとうハヤトはその場にしゃがみこんでしまって。その拍子に眼鏡を落としてしまって。
「あ…だめ…めがね…」
眼鏡がないと数センチ先すらもぼやけて見えてしまう。それは精神的にも辛くて。ハヤトは慌てて眼鏡を探す。
「めがね…めがね…」
ぺたぺたと床を手探りで探していくが見つからない。見当たらない。
と、ハヤトの後ろの方からこつこつと誰かが歩いてくる音がして。ハヤトは振り向く。
視力の悪い目で誰だろうと模索する。ええと、あの背格好。そして髪の色と長さから考えて…
「えーと、山本さんですか?」
「!?」
違ったようだ。だって物凄くショックを受けている。
「あ、山本さんじゃないなら雲雀さんですか!?」
「…キミって眼鏡ないと本当何も見えないんだね…ていうかその二択だったんだ…」
雲雀は物凄く物凄く悲しそうだった。
「あ…ごめんなさいです雲雀さん。ハヤト…」
と、またもこつこつと靴音が響いて。ハヤトはそちらの方を向く。そこには…
「………パイナップルさん?」
「クフフ。物凄く真面目な顔から出てくる台詞とは思えませんが、とりあえず違います」
「あ、その声は骸さん。おはようございます」
「はい。おはようございます」
本来ならばライバル同士のはずなのにどうして本人達はこうも朗らかなのか。
「それよりもハヤト。また眼鏡落としちゃったの?…はい」
雲雀はハヤトの足元に落ちていた眼鏡を拾い上げて渡してあげた。
「あ、ありがとうございます、雲雀さん」
ハヤトは力なくそれを受けとって。掛けて。…すぐ間近に骸の顔があった。
「わ…」
「んー?なんだか顔が少し赤くないですか?ハヤトくん」
「え…?あ、これは…」
なんでもないんです、そう言いながら立とうとするが、身体は上手く動かずにそのままぺたりと床へ舞い戻ってしまう。
「…ハヤト?」
雲雀がハヤトを覗き込んでくる。しかしそれに注意を払う間すらなく。
どさ…
「ハヤト?ハヤト!」
「ハヤトくん…!?」
雲雀と骸が自分を呼んでいる。しかしそれに受け応えることも出来ない。
火照った身体には冷たいフローリングの床は逆に心地良いんだな、なんて少し場違いなことを思いながら。
ハヤトは意識を手放した。
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