はじめて、しましょ★ - プロローグ -
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彼女が振り向くと、そこにはすごく背が高くて、黒の帽子とスーツを着こなした格好良い男の人が立っていました。

警備員の人はその人を一目見ると驚いて「失礼しました!」と頭を下げて、通してくれました。

なんだかよく分からないけど、助かったようです。


「あの、ありがとうございました!」


ぺこっと彼女は思いっきり頭を下げてお礼を言いうと、しの人は「ああ」と言って彼女の頭を撫でました。


(はぅっ)


彼女は思いっきり顔を赤く染めて、俯いてしまいました。

たとえそれが子供扱いされてることであっても、頭を撫でられると嬉しいようです。

それどころか…もっとしていてほしいと思ってしまうようです。

そういえばあのときの―――あの人もまた、彼女を姉の所に連れて行くまでずっと頭を撫でていてくれました。

あれがその理由なのかも知れません。

彼女がそんなことを思いながらぼんやりとしていると、その人は彼女の顔をじっと見ていました。


「お前…」

「―――え?」

「ああ、いたいた。―――リボーン、遅いよ!探したんだからね!」


男の人が何か言いかけたそのとき、通路の向こう側から髪のかなり立った男の人が駆け寄ってきました。


「ああ。悪い」


その人もその人に振り向きます。彼の名はリボーン、と言うようです。

と、向こう側から来たその人は彼女に視線を向けて…何故かじっと見つめます。彼女は戸惑います。


「―――リボーン、この子…」

「ああ、使えると思わないか?」

(………使える?)


一体なんのことでしょう。気が付けば二人とも彼女の方を見ています。

彼女が思わず後退りしそうになってると向こう側から来た男の人がにっこりと笑いながら言いました。


「ねえ。ボンゴレプロダクションって知ってるかな。オレそこの社長やってる沢田って言うんだ。ちなみにそこの無表情はオレの秘書でリボーンって言うんだけど」


そう言いながら彼女に名刺を差し出します。…ボンゴレプロダクション代表取締役社長 沢田綱吉…

ボンゴレプロダクションといえば数年前に出来た、けれど大きな会社です。すっごい大きな会社です。大物です。

はわはわはわはわ。もしかしたら今忙しくて、貴重な時間を奪ってしまったのでしょうか。彼女はいきなり涙目になってしまいます。


「あ、あああああぅ、すいませんすいませんーっ」

「え!?何で謝るの!?リボーンどうしよう、オレ何かしたかな!?」

「オレが知るか」

「ちちち、違うんです違うんですっすいません、ごめんなさいー!」


もう涙目でパニックな彼女の頭に何かが触れます。…見上げると、リボーンが彼女の頭を撫でていました。


「少し落ち着け。別に誰も怒っちゃいねぇ」

「は、はい…」


あうあうと赤くなりながらも彼女は何とか気を落ち着けます。深呼吸です。吐いてから吸うのが正しい深呼吸です。

そんな彼女が可笑しいのか、沢田社長は笑っています。


「―――ああ、いや、失礼。ね、もしよかったら眼鏡を取ってくれないかな?」

「え?」


眼鏡。先程も言いましたが彼女は勉強のしすぎで視力が悪く、眼鏡をしています。

彼女の目の悪さは半端じゃないです。すぐ傍にいる人の顔すら判別付きません。

だから眼鏡がないと本当に死活問題なのですが…


「あ、いや。そんな何分もしないでいいから。ほんの数秒だけ…キミの素顔を見てもいいかな?」