はじめて、しましょ★ - 雲雀編 -
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『…あ、雲雀さんー?起きてました?寝てました?』
「何の用?用件は手短に」
『あっはははは!その様子だと寝る前みたいですね、よかった!』
何がよかったというのか。不機嫌な顔が隠れない。
「キミが僕をさん付けで呼ぶときはろくなことがない用があるとき。それで何?」
『なるほど、流石は雲雀さん。いい着眼点ですね!それで、実はー…ハヤトのことなんですけど』
「彼女がどうかしたの?」
『彼女、今日から寮暮らしじゃないですか』
「そうだね。そういえば朝迎えに行ったけどちょっと元気がなかったかな。何か問題でも?」
『問題というか…なんというか』
あの沢田が口を濁すだなんて珍しい。…それほどの問題が?
『…あのさ、寮って一人暮らしじゃない?』
「そうだね。この会社の寮は一人一つ。一人暮らし用の寮だね」
『うん…でさ、必然的に家事のスキルが必要になるよね』
「そうだね。………ってまさか」
『あはは…ま、女子とはいえ中学生に求めるスキルじゃないよね…』
「なに?からっきしなの?」
『というより家事との相性が悪いっていうか。家事の神様に嫌われてるっていうか』
家事の神なんているんだろうか。そんな疑問はさておき。
『ご飯の炊き方とか分からなくって…結局何も食べないまま出掛けちゃって。お昼前にばたんきゅー』
「あーあ」
『取り合えず今日は家に…あ、実家方だよ?オレの部屋じゃないよ?母さんの所に泊めてるけど…』
「まぁいつまでもそれに甘えるわけにもいかないよね。ストーカーも怖いし」
『そう、そうなんですよ雲雀さん』
「じゃあそういうことで。僕はもう寝るよ。お休み社長」
『ストップ!ストップだってば雲雀さん!!まだ用件言ってない!!』
「初めに言ったでしょ?用件は手短に。言うつもりがないならそれでもいいよ。僕はもう寝るから」
『いや今からです!今から言うんです!!雲雀さんって意外と家事出来ましたよね!?彼女の家政夫やって下さい!!』
「………はぁ?」
『家政夫です。朝起こしてご飯作ってあげて下さい』
「なんで」
『予定の付く人が他にいないんですよー!そうじゃないといくら信用の置ける人だからって女の子の部屋に男を送りませんて!』
それはそうだろう。僕としてもそれは困る。
『お願いしますよ雲雀さん!一日!たった一日だけでいいんで!!次の日から別の人間を寄越しますから!!』
「……………はぁ。一日だけ、だからね」
『!!ありがとうございます雲雀さん!助かりました!!』
「それが仕事だからね。悲しき社員は言われることを聞くだけさ」
『流石は雲雀さんですね、それじゃあ彼女の寮の番号はファックス送っておきましたので今から行って下さい!あ、彼女には既に連絡済みですから!!』
「キミ一遍だけでいいから咬み殺させてくれないかな?」
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