はじめて、しましょ★ - 雲雀編 -
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…とまぁそんな訳があったりしたのだ。
帰りたい…
しかしそういうわけにもいくまい。やれやれため息また一つ。
こんこんと扉をノックする。やがてぱたぱたと足音が聞こえてきて―――ドアが開いた。
「いらっしゃいませです雲雀さん!!お待ちしておりました!!」
出てきたのは満面の笑みの我が社のアイドル…ハヤト。
お風呂上りなのだろう、服装は薄いピンクのと白のチェック模様なパジャマ。頬は赤く上気していて髪は少し湿っていた。
ていうかこの子危機感とかないのだろうか。いくら知り合いと入っても男と女なのに。
「あのですねあのですね!今日はレコーディングが上手くいったんです!そしたらリボーンさんが頭撫でてくれたんですよー!!」
危機感とかまったくありそうになかった。
「…へぇ。ハヤトは頭撫でられるの、好きなの?」
「あ…は、はい。その……好き、です」
子供扱いされると思ったのだろう、顔を赤くさせて、俯かせて。
「………」
なんとなく手をハヤトの頭に載せて撫でると、彼女は面白いぐらいに反応した。
「はわ!?ひひひひ雲雀さん!?」
「なに?今日はレコーディングが上手くいったんでしょ?僕からもご褒美。…よく頑張ったね、ハヤト」
そう言って撫でる手を再開させると、ハヤトは固めた身体の緊張を解いて。身を僕に任せて。
「………はぅ」
頬を紅潮させて。目はとろんとまどろんで。
……………。
ぱっと手を離す。ハヤトが現実世界に帰ってくる。
「はわ…?」
「今日はおしまい。また頑張ったら撫でてあげるね」
「あ、は、はい!ありがとうございました雲雀さん!!」
女のタイプ次第では「セクハラ」と訴えられそうだったが彼女の場合は本気で礼を言ってるように見えた。
…どうしよう。この子本当に危機感皆無だ。
「…はぁ。ハヤト晩御飯はもう済んだの?明日も早いんでしょ?済んでいるなら今日はもうお休み」
「あ、はい!お気遣いありがとうございます雲雀さん!」
ぱたぱたと寝室に走っていくハヤト。よく見たら彼女が履いてるスリッパは兎を模していて、ちょっと可愛かった。
…と、いけないいけない。僕はあの子の家政夫になりに来たんだった。
さて、朝は早い。今のうちに朝食と昼食の下拵えをしておこう。
そうして夜は深けていった。
―――暑い暑い、真夏の夜は。そうして。
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