はじめて、しましょ★ - 雲雀編 -
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「…なるほど。それは大変だったな」

「うん。本当、大変だった」


項垂れる。ああ、本当、女子中学生のタンスを漁るだなんて真似は一生ごめんだ。気分は最悪。


「それは災難だったが…そのお前がなんでハヤトの仕事場にまで着いてきてるんだ?」

「今日は他にやることがないんだよ…あの社長がよく分からない気を遣ってね。今日はハヤトでも見てろって」

「そうか。じゃあどうだ?ハヤトの感想は」

「そうだね…」


遠い目をして―――いや、その目線の先にいるのはハヤトなんだけど…


「あの子、一人で生きていける?」

「無理だろ」


即答で答えられた。まぁそうだろう。


「なんで何回も来ているスタジオで迷子になりかけるの…」

「方向音痴らしい」

「なんでただ歩くだけで特に何もない平面な床で転ぶわけ?アイドルっていうのは身体傷付けちゃいけないんじゃない?」

「そうだな…あ。また転んだ」

「本日通算六回目だね」

「ああ」

「それにどう考えたって嘘であろう事も本気で捕らえちゃうようだし、物忘れは激しいし、陳腐な物語でも簡単に泣くし…!」

「お前少し落ち着け」


無理だよ。あの子を前に平常な心なんて保てるわけがない。

それほどまでにあの子は危なっかしい。見ていてはらはらする。

何ていうのかな…あの子を乗せて運転している時は気付かなかったけど、こうして見ていると…そう。

守ってあげたいっていうか…保護欲に狩られてどうしようだよ。

まさか人間嫌いのこの僕にそんな感情があるなんて思っても見なかったけどこれが現実らしくてどうしようだよ。

何ていうか…娘を思う父親ってこんな感情なんだろうなっていうか。


「ああ!僕どうしたらいい!?」

「知らん知らん」