あれから…
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「やあ。元気?」


見れば分かるだろう、ボケ。


「…なわけないか」


睨み付けてやると雲雀は肩を竦めた。…こいつ、こんなキャラだっけか?

いや、それより、そんなことより雲雀がここに来たということはまさか10代目まで来ていないだろうか。

それは困る。それは非常に不味い。雲雀程度にオレの風邪が(移るとは微塵も思っちゃいないが)移っても別にいいが10代目に移るのはあってはならないことだ。


「そんな心配そうな顔しなくても、彼は来てないよ」


雲雀のその言葉を聞いて、オレは安心する。よかった。10代目がいないのはいいことだ。


「…彼も立つ瀬がないな……」


雲雀が何かを呟くが、オレには聞こえなかった。頭がボーっとする。

…ああ、そうだ。丁度いいや。

オレは点滴を受けてない方の腕を上げ、雲雀を手招く。


「…うん?どうしたのさ」


少し意外そうな声を出しながらも、雲雀はオレに近付いてくる。

直ぐ傍まで来た雲雀の手首を掴む。…ああ、これは本当に丁度よさそうだ。

オレは雲雀の手のひらを額に押し付けた。


「…………………………」


うむ。予想通りにこいつの手は冷たくて、熱冷ましにちょうどいい。


「…………………………」


こんな奴でも何かの役に立つもんだな。馬鹿とはさみは使いよう、って奴だ。


「…………………………」


額が冷えてきて、次は頬の熱が気になりだした。雲雀の手をそちらへと移動させる。

そしてオレの意識はそこでまた途絶えた。



「…ああ、雲雀、お帰り。獄寺くんどうだった?」


戻ってきた雲雀にそう尋ねるも、雲雀は無言だった。


「……雲雀?」


再度声を掛けるも、雲雀は聞こえてないかのようにふらついている。

……獄寺くんの風邪が移ったのだろうか。雲雀もあれで意外と病弱キャラなんだよな……


「…ああ、キミ、いたの」


ようやく雲雀がオレに気付いたらしく、声を掛けてくる。

…って、ここは一応オレの主務室なわけなのだが。


「獄寺くんはどうだった?」

「駄目かもしれない」

「ええ!?」


一瞬またいつもの冗談やからかいかとも思ったが雲雀の表情は硬く、重いものだった。


「そんな、さっき軽い風邪だって!!」

「いや、風邪じゃなくて、肉体的に」

「肉体!?まさかあのときの怪我が悪化したとか!?」

「いや、それも違くて」

「……?」


どうも要領を得ない。どんな風に言葉を投げたらオレにも分かる回答が得られるだろうと考えていたら、雲雀は手のひらをピッと真っ直ぐにして、


「僕が、今しがた、思いっきり彼の額にチョップをしてきたから…記憶障害とか起こしてるかも…」

「お前何しに行ってきたんだよ!!」


いかん。またお前とか言ってしまった。でもこれは仕方ないだろう。一体誰がオレを責められよう。

雲雀は雲雀でこれまたまったく気にしてないようで、そんなことより、と電話を指差す。


「今すぐ、冷えピタとか、熱さまシートとか、そんな感じなの注文…ていうか、業者にもう持って来させて。100箱ぐらい」

「……は?」

「急いで。このままだと……ボンゴレは壊滅してしまうかもしれない」


冷えピタと熱さまシートがボンゴレを救うらしい。意味は分からないが。

…いや、意味はあるだろう。雲雀がこんなわけの分からないことを何の意味もなく言うわけがない。

オレは暫し考えて……そしてある可能性に思い当たって。思わず席を立った。


「ちょっと獄寺くんとこ行ってくる!!」

「駄目だって」

「ずるいよ雲雀ばっかり!!」

「キミの体温高いから意味ないって」

「やっぱりそういうことか!!何でオレこんな役回りなんだよ!!ボンゴレ10代目だぞ!!」

「ああそれと綱吉」

「なに!!」

「僕、一歩リードしたから」

「もう本当腹立つなお前!!」


と、オレたちがわーわーぎゃーぎゃー言ってるうちに獄寺くんを堪能したらしい(あとで聞いた。本人に)クロームが受話器を取って冷えピタと熱さまシートを注文していた。


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後日それぞれ500箱ぐらい届きました。