アスパラの暗号
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夜の飛行機の中。オレは見慣れた並盛を見下ろしていた。

この往復はもう何度目になるのだろう。最初は慣れなかったこの浮遊感にも、すっかり抵抗力が付いてしまった。

オレは意識を数時間前に戻す。夕刻、あいつに会ったあの時に。

あいつに言われて思い出した。あいつの野球試合が明日、あることを。

何度も何度もせがまれて。まぁ暇だったらなと返事をして。

―――けれど、そうは言っても実は少しだけ見るのを楽しみにしていたのだ。…あいつにだけは絶対に言えないが。

野球のルールはまったく分からないけど、でもあいつが必死で練習してたのは知っていたから。あいつの勇姿を見るのを実は密かに楽しみにしていたのだ。


こんな予定がいきなり入ってしまったが。


まぁ仕方ないだろう。帰ってきたらあいつの自慢話をこれでもかというほど聞いてやろう。

さて、あいつは気付くだろうか。オレからの応援メッセージに。

もしも気付かずに茹でて食べてしまったならあいつの頭を思いっきりはたいてやろうと思ったが、きっとあいつは気付くんだろうな。


あいつ、勘がやけに鋭いし。


そんなことを思いながら、オレは今日買ったアスパラに付いてきた紙に目をやって。文字を目で追う。

アスパラガスの花言葉―――「勝利の確信」…なんて。

オレが明日のあいつの試合にそうなるだろうと、そうだと感じているものを。


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負けてたらどうするかな。殺すか。