過ちは過去か現在か
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「いやぁ、びっくりですね。ペイント弾に本物が混じっていたなんて」
「ああ。そうだな」
恋人同士が晴れた日の道を歩いている。…正確には歩いているのはひとりだが。
「でも撃たれたのが足で助かりました。…いえ、でもこうしてリボーンさんの手を煩わせていますしオレも足手纏いになってしまったのですから逆に助かっていません?」
「そうかもな」
黒衣の少年が銀の青年を車椅子に乗せて、押していた。
「あちゃー…オレみんなの迷惑になるのなんて考えられないんですけど。どうでしょうリボーンさん。ここは一つオレを殺して下さっては」
「めんどくせーからお断りだぞ」
白の青年の足には、恋人に撃たれて出来た傷を隠すように白の包帯が巻かれていた。
「ええー。いいじゃないですか。リボーンさんなら簡単にオレを殺せるでしょう?それにオレ…その、死ぬなら好きな人の手でって夢見てるんですから」
「夢は夢のままで終わらせとけ」
ほんのり頬を染めながら物騒なことを言い放つ獄寺に、リボーンはあくまでも淡々と繰り返す。
「ちえー…っ」
「………」
残念そうに口を尖らせる獄寺。リボーンの表情は変わらない。
「…でも、リボーンさん」
「なんだ」
軽く問い掛けられる言葉に、無表情に返事を返すリボーン。
「実弾が混じってるって、気付いていましたよね」
「当然だぞ」
笑いながら問い掛けられる言葉に、やっぱり無表情で返事を返すリボーン。
「それでも撃ったのって。何でですか?」
「お前、撃ってほしかったんだろう?」
即答で返ってきた言葉に、獄寺は一瞬言葉を失って…
「―――だからリボーンさんってだいすきです!!」
すぐに、満面の笑みで言葉を返した。
「ペイント弾と実弾を取り替えたのもお前だな。最初から分かってたぞ」
「嗚呼…やっぱりです。オレの読みは当たってました。リボーンさんならきっと全部全部分かってくれるって信じてました!」
「そうか。期待に応えられたようでなによりだ」
「うーん、オレとしてはペイント弾の当たった所を実弾で撃ってほしかったんですけど」
確実に即死ルートだった。
「でも仕方ありませんよね」
獄寺はなんでもないように答える。
「リボーンさんはオレのこと嫌いですから」
にっこりと微笑んで、獄寺は恋人の想いを否定する。
「オレが本当に望むことまでは…意地悪でしては下さいませんよね」
分かってますと言わんばかりに静かに微笑む獄寺。一方リボーンは何も言わない。否定も肯定もしない。
しかし彼の名誉の為に言っておくとするならば、獄寺の言い分は外れもはずれ、大外れだ。
リボーンは獄寺の事を愛している。
ただ、その事を獄寺が信じてくれないだけで。
恋人というポジションに立っているのにも関わらず今でも…そう信じて。疑ってない。
どうやらその理由の一つが、その昔。リボーンが獄寺に冷たく当たっているたのに起因しているらしくて。
実はそれは本命である獄寺にだけつい素直になれなくて。真逆の対応をしてしまっていただけなのだが獄寺には通じてなかった。
「―――ね。リボーンさん」
獄寺は遥か遠くを見ながら、真後ろにいるリボーンに囁きかける。
「オレ、あなたが好きです」
ほんのり頬を赤く染めながらの告白。けれどリボーンの無表情は解かれることを知らない。
…次に言われることはもう、分かっているから。
「ね。だからリボーンさん。後生ですから」
獄寺がくるりと振り向いて。リボーンと向き合う。
「最後の時は、ちゃんとオレを殺して下さいね?」
そういう獄寺の瞳は。
「そうして下さったらオレは―――幸せですから」
既に…焦点が合ってなかった。
リボーンはため息を一つ吐いて。獄寺の目蓋の上に自分の手の平を乗せてその目を隠した。
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過去の代償高すぎだろ。
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