ある日のバレンタインデー
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2月14日…聖ヴァレンタインデー

男なら…それも好きな女の子に想いを寄せる男なら気にせずにはいられない一大イベント。

そして彼もまた、そんな心ときめかせる一人の男の子だった。


「………」


彼の名は、風。

並盛幼稚園に通う園児の一人。

そして同時に、ある一人の女の子に想いを寄せる男の子。

その女の子は華奢で小柄で、けれど元気いっぱいの女の子。


けど、風は知っている。


彼女は、自分のことを異性として見てはいないのだと。

自分といると落ち着くと言ってくれた彼女は、けれどそのあと、「もし自分に兄がいたら、きっとこんな感じなんだろうな」とも言っていた。


兄。


それが彼女の目に映る自分。

…自分は、彼女をそんな目で見ることは出来ないのに。

…自分は、彼女が好きなのに。

思い出すことで、一抹の切なさも同時に思い出す。

けれどそんな表情は決して表には出さずに。

今日も彼は彼女に挨拶をする。


「おはようございます、リボーンちゃん」


声を掛けられた彼女が、挨拶を返す。


「おはよう、風」


彼女…リボーンちゃんは笑顔で返してくれた。