微熱
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「―――悪かったな」


部屋に戻り、ベッドに入ったリボーンはうわごとのように呟いた。


「いえ、そんな…それより何か欲しいのありますか? 持ってきますよ、オレ」


言われて、暫しリボーンは重巡していたがやがて観念したかのように水を、と一言。

獄寺は頷く代わりに微笑んだ。リボーンに頼られるような、そんな日がまさか自分に訪れるとは。

早速行動を起こそうとする獄寺だが、しかし不意に動きを止める。

―――袖を、リボーンが握っていた。


「リボーンさん…?」

「獄寺……お前に一つ、言っておくことがある」


リボーンは身体を起こし、獄寺を見つめる。


「―――いつも、お前を見ていた」

「え…」

「お前が一人で修行して、傷だらけになって、でも上手くいかなくて、悩んでいることも、知ってた」

「………」

「まったく…少しは頼ってくれても良かったのに」

「それは…」


獄寺の顔が熱くなる。それは気恥ずかしさからか、自分の秘密がばれていたからか。

リボーンの手が、獄寺の頭に乗る。


「だが…まあ、頑張ったな」

「…っ!?」


獄寺の心を戸惑いが占める。

褒められた、認められたことに対する戸惑い。

何故だか、涙が出てしまった戸惑い。


「りぼ…」


声を出すが、リボーンは既に寝入っていた。


「………、」


冗談、とは思えなかった。

そのような声色でも態度でもなかった。

つまり本気で…本当にそう思って……そう言ったということで…

そう認識すると同時、獄寺の心が満たされたような、一気に傷が癒えたかのような、そんな心地よさを覚えた。

そしてまた、新たな涙が流れる。

見られてた、知られてた、分かられてた。


そして、認められた。


それだけだ。ただ、それだけ。

たったそれだけなのに、涙が止まらない。

もういい年した大人なのに。

子供の頃だって、こんなに泣いたことはない。

今日はまだ始まったばかりで、やることが沢山ある。

でも、今はまだ。

今だけは、落ち着くまでは、この場で、ただ泣かせて欲しかった。


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なお、アルコ風邪は眠る寸前、思い浮かべた人物に最期の一言を伝えてしまうらしい。(言った本人の記憶は残らない)