分岐点
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…あれから、一度だけ…(ツナに引っ張られるようにして)獄寺の病室に行ったことがある。

そこにいた獄寺は―――オレの記憶のうちにあるあいつの姿とは変わり果てて見えた。

肉が落ち、ほぼ皮と骨で構成されたような肉体。

身体のいたるところからチューブが刺され点滴が打たれ…そうして無理に、生き長らえされていた。

薬物漬けにされ、起き上がること…いや、意識を取り戻すことすら二度と出来そうにない獄寺。

そんな獄寺を見て、獄寺をこんな常態にさせたツナは…「無事で良かった」と涙を流していた。


無事? 無事だと?

この状態を見てツナは無事というのか?


ツナの獄寺を死なせたくないという気持ちは分からないでもない。

けれど…これは異常だ。

怒りにか、それとも失望にか…オレは思わず思いの丈をツナにぶつけようとした。

けれど。



       リボーンさん。

       やめて下さい。



小さな声が、それでも確かに耳に届いた。

ツナをぶん殴ってやろうと思っていた右腕を誰かに掴まれる。

振り向くが、誰もいない。

腕を見てももちろん誰の手もなくて。…掴まれていた感触さえもう消えていた。

それでも確かに"い"た。

ツナの事を一番に考え、ツナの事を第一に行動する"誰か"が。


「……………」


オレはこれ以上そこにいられなくなって。退室した。

それから今日に至るまで、獄寺に関する話は一切聞いてない。