分岐点
12ページ/全13ページ
…あれから、一度だけ…(ツナに引っ張られるようにして)獄寺の病室に行ったことがある。
そこにいた獄寺は―――オレの記憶のうちにあるあいつの姿とは変わり果てて見えた。
肉が落ち、ほぼ皮と骨で構成されたような肉体。
身体のいたるところからチューブが刺され点滴が打たれ…そうして無理に、生き長らえされていた。
薬物漬けにされ、起き上がること…いや、意識を取り戻すことすら二度と出来そうにない獄寺。
そんな獄寺を見て、獄寺をこんな常態にさせたツナは…「無事で良かった」と涙を流していた。
無事? 無事だと?
この状態を見てツナは無事というのか?
ツナの獄寺を死なせたくないという気持ちは分からないでもない。
けれど…これは異常だ。
怒りにか、それとも失望にか…オレは思わず思いの丈をツナにぶつけようとした。
けれど。
リボーンさん。
やめて下さい。
小さな声が、それでも確かに耳に届いた。
ツナをぶん殴ってやろうと思っていた右腕を誰かに掴まれる。
振り向くが、誰もいない。
腕を見てももちろん誰の手もなくて。…掴まれていた感触さえもう消えていた。
それでも確かに"い"た。
ツナの事を一番に考え、ツナの事を第一に行動する"誰か"が。
「……………」
オレはこれ以上そこにいられなくなって。退室した。
それから今日に至るまで、獄寺に関する話は一切聞いてない。
次
前
戻