分岐点
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「久し振りだな」

「あ、リボーンさん…」

「奇跡、とか言うなよ。それはもう飽きた」


先に釘を差しておくと、獄寺は言葉を忘れてしまったのかのように口を開いたり閉じたりして…


「………奇跡でなければ、なんだというんですか?」


と言った。

…って、本当にそう言うつもりだったのか…

つーかそこまで無垢な表情で返されるとは思わなかったな。


「…偶然の積み重ねだ」

「なるほど…」


適当に返したら納得された。

やっぱり馬鹿だな。こいつ。


「こんな所ほっつき歩いてて大丈夫なのか? 体調が悪化したんだろう?」

「…よく、分かりませんが…たぶん、大丈夫ですよ」


たぶん、全然大丈夫じゃねぇなそれは。


「はぁ…その分じゃあ、案外復帰出来るんじゃねぇのか? で、お前はまたツナの右腕だ。オレも面倒ごとから解放されて万々歳だ」

「あはは…。だと、本当に嬉しいんです、け…ど…―――」


…と、不意に―――…獄寺の顔から、表情が消えた。

喜怒哀楽が抜け落ちてしまったかのように、色のない顔になった。


………?


獄寺の視線の向く先。

には…


「あれ? こんな所で会うなんて珍しいね。リボーン」

「って、なんだツナか」

「なんだって…仮にもこのアジトのボスになんだはないでしょなんだは」

「とんだ期待外れだ」

「何を期待してたのさ!!」

「何って…」


獄寺が珍しい顔をしたものだから、それ相応のものが飛び込んでくるかと思った。

そう言おうとして…何か違和感に。気付く。


…なにか…おかしくないか?

なんで、こいつ…


急に黙り込んだオレを見て、ツナが不審がる。


「? どうしたの? リボーン」

「どうしたってお前…」

「?? …ま、いいや。オレ行くところがあるから。じゃあね」


言うが早いかツナはそのままオレと獄寺の間を通って去ろうとする。

獄寺は無言のままだ。


「―――ツナ」

「ん?」


思わず、呼び止めた。…何を言うかも考えてなかったくせに。


「………どこに行くんだ?」


少し考えて口にした言葉。それにツナは取り分け表情を変えることもなく。


「どこって、決まってるでしょ? 獄寺くんのところ。毎日お見舞いに行ってるって、リボーンも知ってるでしょ?」


なんて当たり前のように言い放って。ツナは今度こそ"獄寺のところ"へと向かって行った。

…ツナは、一度たりともオレの隣にいる獄寺に目を向けることはなかった。