ボンゴレの日常 伝言板編
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今日の夜は山本と雲雀、どっちに恨まれるか。
それともいっその事、どこかの抗争にでも行って誤魔化してしまおうか などと考えながら、部屋へと入る。
扉を潜ると、丁度入れ違いに、誰かが別の出入り口から出て行くところで。
あの特徴的な髪型は間違いなくあの人だろうけど。
…そして用件は、間違いなくあの掲示板だろうけど。
掲示板まで、近寄ってみる。
前の二人の伝言は…見るも無残なくらい、極太マジックで消されていて。
オレはあの人が、どんなことを書いたのだろうかと、またもその掲示板を覗き込んでしまった。
…二人とも飽きないねまったく。獄寺くんはオレのだって、何度言えば分かるの。
一体オレが、何故、何の為にボンゴレに入ったと。10代目になったと思ってるのさ。
全ては獄寺くんを娶るためだよ。
だから二人とも、夢を見るのは勝手だけど、いい加減現実にも目を向けなよね。
ていうか、獄寺くんに手を出したら殺すから。
――あ。獄寺くん。今夜はオレの部屋に来なよね。
ツナ
「……」
えーと…娶る…?
10代目がボンゴレに入ったのって、そんな理由だったんですか…?
オレは無性に泣きたくなったが、目頭をきつく押さえることにより何とかやり過ごす。
――と、いきなり後ろから気配を感じ、見るとそこにはリボーンさんがいた。
「どうした?獄寺」
「え…っと、その…」
どもるオレに、リボーンさんは掲示板に気付いたようで、それを覗き見る。
「…なかなか面白いことになってるじゃねぇか」
「からかわないで下さいよ…」
「ああ、悪い。――で?お前は今夜、誰と過ごすつもりなんだ?」
「いえ…その。まだ…」
というか、誰とも過ごす予定ではないのですが。
「ああ。決まってないのか。なら、こうすればいい」
言うが否や、リボーンさんは今までのメッセージを丸めて捨てて 、また新たにメモを書き始めた。
オメーら随分と楽しそうなことしてんじゃねぇか。オレも混ぜろよ。
つーかてめぇら、ボンゴレに入ったのは皆獄寺が狙いか。良い度胸してやがる。
でも残念だったな。獄寺はオレの物だ。 それこそ 頭の天辺から足の爪先までな。
いつからって?10年前からだ。 まだおめぇらが獄寺の魅力に気付く前からな。
ま、オレはお前らみたく心が狭くはないから、少しぐらいならお前らに獄寺を貸してやってもいいがな。
そんな訳で今夜の予定は獄寺に任せるが、時間が来たら獄寺はオレが持って帰るからな。その事だけは忘れるなよ。
むしろ肝に銘じておけ。
どこにいても何をしていても。オレからは逃れられないからな。
そこまで書くと、リボーンさんはオレの頬にキス一つ落とし。
「じゃ、そういうことで…獄寺。今夜な」
そう言っては、部屋を後にした。
パタンと扉が閉まる軽い音を聞いて。オレの思考が動き出す。
…なんだか、ますます泥沼化としたような。
ていうか。しまった。
オレには人権どころか逃げ道すらもありませんでしたか。
たとえ今から敵アジトに乗り込んだとしても、リボーンさんは我が物顔でやってきてはオレを攫って行くのだろう。きっと。
オレはまた掲示板を見る。
最早そこには当初の目的であったであろう、いつ死ぬか分からないゆえの最後の伝言とは程遠いものしかなく。
オレは9代目が引退した時にオレに放った、「私と一緒に来ないか?」という台詞に素直に頷いておけば良かったかなと思いつつ。
一体どこで道を間違えたのかと、夜になるまで考えていた。
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さて今夜は…今夜は……
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