ある日の並盛 夢編
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「―――――獄寺!!」
「…あ?」
山本は獄寺を遮るように立ち。
「ここを通りたくば、オレを倒してから行けー!!」
なんて。そんな今時漫画ですらお目にかかれないような台詞。
「よく分かんねぇが、こっちだって急いでんだよ!野球馬鹿!!」
そう言って、ダイナマイトを両手一杯に取り出す獄寺。殺る気満々だった。
獄寺は一切の躊躇いもせず。山本に火の点いたダイナマイトをぶん投げる。
大きな爆発音。そして衝撃。けど、山本はここで引くわけにはいかないのだ。獄寺の為に。
「ま、まだだぜ獄寺…オレはまだ倒れちゃいねぇ…」
そう格好付ける、山本に。
むぎゅり。
獄寺の飛び蹴りが見事に決まった。
「…よく分からねぇが、オレは急いでんだ。あばよ、山本……」
獄寺の声が遠い。ここまでなのか、オレは。未来は、変えられないのか。
そこに、あの光景が、夢の内容がフラッシュバックする。突っ込んでくるトラック、驚愕の表情を浮かべる獄寺、………飛び散った、赤い液体―――
―――まだだ!山本は起き上がる。全てはあの悪夢を繰り返さないために。
「獄寺ー!!」
山本は叫ぶ。獄寺は無視を決め込んだのか、見向きもしない。信号が青に変わるのを今か今かと待っている。やばい。
けれど山本には、今から獄寺の動きを止められる術が分からなかった。何をすれば獄寺は信号を渡らないのか。
しかし迷う時間すらない。信号はもうすぐ変わってしまう。青になってしまう。トラックが来てしまう!!
「ご、獄寺!!」
一瞬迷ったが、山本はまた叫んだ。獄寺はうざったそうに、ちらりと山本を見た。そしてその表情が今度は驚愕に変わった。
「好きだ―――――!!!」
いきなりの、熱烈な愛の告白に。
何事かと、周りの通行人の目も止まる。山本は気にしない。気にする余裕がない。
「獄寺!お前が好きだ!お前の全てが好きだ!頭良い所も、どこか抜けてる所も、その銀の髪も、その辺の動物に話しかける所も!!」
山本の告白は止まらない。銀の髪、で通行人の目が獄寺にも移った。焦る獄寺。
「な…に言ってんだ野球馬鹿!」
赤い顔をして、獄寺が山本に向かって走ってくる。けれど山本は気付かない。まだ告白を続けている。
「お前の花火を投げる姿が好きだ!お前の煙草を吸う仕草が好きだ!ツナに無邪気に笑いかけるのが好きだ!オレはそんなお前に夢中なんだ!!」
「あーもう!黙れ野球野郎!!」
獄寺がさっきの倍の数のダイナマイトを構える。しかし山本は止める気配がない。獄寺は迷わず火を点け、投げた。
先ほどより大きな爆発音が響くが、獄寺はまだ攻撃を止める気はないようだった。山本を蹴りつける。
山本は山本で、周りが見えなくなったのかどんな攻撃を入れられても獄寺へ送る愛の告白を止めようとはせず。
それが更に獄寺を赤面させて。止めさせようと攻撃を続けさせる要因になり。
そんな二人が争う後ろでは、信号無視をしたトラックの運転手が警察に怒られていたのだが―――
今の二人が、それを知る由はなかった。
++++++++++
知った時の、獄寺の反応は…
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