ある日の並盛 夢編
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ある日。獄寺がツナの家に遊びに来た。

それだけならば、いつも通りの日常だったのだけれど。何故かツナは良い顔をしなかった。


「………?10代目?オレ何かしましたか?」


と、獄寺が聞いても。


「―――なんでもない」


と。答えるだけで。

ツナは獄寺の顔をじっと見る。いつもと違うツナに戸惑う獄寺。


「………獄寺くん。実は眠い?」

「え、何で分かったんですか?…えぇ、実はお恥ずかしながらここ数日ろくに寝てなくて…」


不眠症だという獄寺に、ツナはますます険しい顔をする。


「10だ…」

「獄寺くん」

「は、はい」

「今夜、寝るの禁止ね」

「はいっ!?」


思いがけない命令に、獄寺は素っ頓狂な声を上げてしまった。


「――今の。肯定って取ったから」

「え、いや、今のは肯定ではなく…」

「10代目命令」


そこまで言われてしまったら獄寺は何も言えない。戸惑いながらも頷く。


「…分かりました。でも、理由ぐらい教えて下さい」

「………」

「10代目?」


促す獄寺に、ツナは


「――明日の朝まで、獄寺くんが起きてたら。教えてあげる」


そう答えるだけだった。



それから夜も更け。帰ろうとする獄寺をツナが引き止める。


「…寝たら、困るから家にいて。見張ってる…」


そう言うツナに、獄寺は了承する。まだ夜は始まったばかりだったが、既に獄寺の脳は半分寝入っていた。

うとうとと。獄寺は眠りかけて―――


「獄寺くん!!」

「は、はい!」


ツナに怒鳴り起こされる。

それで少しは目も覚めるのだが、それもやはり時間が経つと同時に睡魔が襲ってきて。

それでまた寝かけて。そこにまたツナの怒鳴り声に叩き起こされて。

暫くの時間をそうやって過ごした。

獄寺はそういえば拷問の一つにずっと寝させないというものがあったなと。そんな事を思い出していた。


(これは…確かに。辛い)


しかし他ならぬ10代目ことツナの頼みならば。獄寺は何でも叶えるつもりであった。

けれど流石に普段のツナが嫌がって使わない「10代目命令」を迷わず遂行するだけあって。任務は困難なものであった。


(ね…む……)