声の出ない獄寺くん
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…声が復活する可能性は、ないわけじゃなかった。
少ないけどまだあって…そのために検査を頼んでいた。
……だけれど。
お前の声は、もう出ない。
シャマルにそう断言されてしまった。
声が出なくなったからと言ってこの仕事を辞めるつもりは毛頭ないが、それでも周りには迷惑を掛けてしまうだろう。
…いつまでもリボーンさんのお世話になるわけにもいかないし。
今でこそオレはリボーンさんの恋人ではあるが…それだっていつまでかも分からない。人の気持ちは移ろうものだ。
それにあの人愛人たくさんいるし…オレ男だし…年の差…はあまり関係ないかも知れないけどオレよく馬鹿だって言われるしな…
考えれば考えるほどどんどん悪い方向へと意識が持っていかれる。今オレ一人だからだろうか?
…一人。そう、今オレは一人だ。
リボーンさんは今9代目のところに行っている。そしてオレは一人で自室へ戻っている途中で。
「……………」
―――早く、部屋へ戻ろう。一人も広い空間もまだ慣れない。
そう思って駆け足にすると、通路の脇から伸びた両手に引きずり込まれた。
―――!?
思わず身が強張る。
大柄の男に抱きしめられた…かと思うと、頭上から声が降ってきた。
「―――よ!スモーキン久しぶりだなぁ!!会いたかったぜ!!」
お前かよ。
オレは思わず思いっきりディーノのスネを蹴っていた。
「いってーーー!!おま、いきなりご挨拶だな!!」
うるせー跳ね馬ーーー!それはこっちの台詞だ馬鹿野郎!!!
そう言って、睨んでやる…が、ディーノには通じてないようだ。
「…あー、やっぱりお前。喉潰れてるのか。噂は本当だったんだな」
―――――っ、
思わず息を呑む。やっぱりある程度は既に知られているらしい。
「だけどお前、ボンゴレのアジト内だからって少し油断してないか?オレだったから良かったものの、またどこかの馬鹿だったらどうするんだよ」
……………。
そう言われて、オレは黙り込むしかない。
確かに、その通りだ…。以前襲われたのだってボンゴレアジト内だったのだし、今は昼とはいえ多少は警戒すべきだった。
「…どこぞの馬の骨に暗闇に引きずりこまれるスモーキン!声を上げたくともそれも出来ず…ああ、変態の手によりスモーキンの服が、ああ、びりびりとー!!」
気色の悪いこと叫んでんじゃねーーー!!!
オレはまたディーノのスネを蹴った。さっきと同じところを強く蹴った。
ディーノは今度は本気で痛かったらしく、言葉を上げることもできずもんどりうっていた。
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自業自得だ。馬鹿。
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