声の出ない獄寺くん
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ディーノに連れられて、自室まで戻ってきた。
「ここまでで良いか?じゃあオレは…」
立ち去ろうとするディーノの袖を、オレは掴んだ。
「ん?」
世話になったから、少し寄ってけ。
オレは言いながらドアノブに指をやった。
「…ん?なんだ?お誘いか?」
まぁ、そんなもんだ。
こくりと頷くと、ディーノは嬉しそうに笑った。
「おお!中々大胆だなスモーキン!お前こんな明るいうちから…」
じゃあな。助かった。
オレはひとりで部屋に戻って鍵を掛けた。
「待ってくれスモーキン!冗談だ冗談!!」
まるで捨てられた女に縋るようにディーノはドアを叩いてきた。
…やれやれ。
オレはドアを開けた。
「スモーキン…!」
入るなら、さっさと入れ。
伝わったのかそうでないのか、ディーノは足早に部屋に入って来た。
…全く。
冗談でもそういうことは言わないでほしい。
オレにはリボーンさんというひとがいるのだから。
………今のところは、だけど。
「お前さー」
んー?
ディーノがそう切り出してきたのはオレが出した茶を啜り終わってからだった。
「キャバッローネに来るつもりねーか?」
………。
はぁ?
「うわその本気で訳の分からん顔腹立つー!」
いや、そんなこと言われてもな…
オレがキャバッローネに行く理由ねーし。確かにボンゴレとは同盟組んでるけど…
「…オレのとこで、声の出ない生活の訓練したらどうだ、って言ってんだ」
………。
あ?
「うわその素っ頓狂な顔腹立つー!」
いや、だからそんなこと言われても…
そりゃその申し出は有難いけど…でもなんでんなこと言って来るんだこいつは?
「…そのー、なんだ。お前ツナに迷惑掛けるの死ぬほど嫌だろ…?オレのとこならツナの様子随時知れるし連絡も比較的楽に取れるしだな…」
オレの思ったことが伝わったのか偶然なのか、ディーノはごにょごにょと理由を言い出した。
…なるほど。
確かにディーノの言うとおり、10代目に迷惑をかけることなんてありえない。多少は訓練したほうが良いだろう。
でも。
オレは首を横に振った。
「…そっか」
悪いな。
「良いってことよ」
キャバッローネの世話になるのも悪くはないだろうけど、
でもそこには、あの人がいない。
いつか別れを告げられるのだとしても。
そのぎりぎりまで、オレはあの人といたい。
…自分の君主よりもあの人を取るなんて、右腕失格だろうけど。
どうやらオレ、右腕である前に人間みたいです。リボーンさん。
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右腕である前に、あなたの恋人みたいです。リボーンさん。
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