声の出ない獄寺くん
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イタリアの街並みを、銀髪の少年が歩いている。その胸に黒い赤子を抱いて。

二人はどこか幸せそうで。何故なら彼らは恋人同士で。

と、そんな二人に近づく黒い影。そして黒い殺意。

だけど、その影は銃という悪意を構えた瞬間に一発の銃声のあと沈黙した。

黒い赤子が放った凶弾に倒れて。


「………これで三件目だな」

リボーンさん大人気ですね。

「嬉しくない」


くすくすと獄寺が笑う。無論声は出てないが。

「オレが傍にいると、お前に危険が及ぶ。それが一番嬉しくない」

大丈夫です。不肖獄寺隼人。腕が吹き飛ぼうと目玉が抉れようとあなたの傍にいれる方が嬉しいので!

「馬鹿野郎」

はい?

「お前に二度と怪我などさせるものか。オレがお前を守るからな」

………なんというか、その…ありがとうございます。

「コラ。照れ隠しに強く抱きしめるな。くすぐったいだろ」


と、またリボーンが銃を抜く。間を置かず銃声が響き硝煙が辺りを支配する。


四件目。ですね。

「いちゃつく時間が減るってのも嬉しくねーな」

なるほど。それは同感です。…でも。

「ん?」

これからは、ずっと一緒に居られるんですよね?

「そーだな。お前がオレに愛想を尽かすまで一緒だ」

それを言うなら逆です。あなたがオレに愛想を尽かすまで、です。

「馬鹿かオメー。オレがお前に愛想を尽かすわけねーだろーが」

オレだって、あなたに愛想を尽かすわけがありません。

「オレと一緒だと、身の危険に晒されるぞ?」

リボーンさんこそ、オレと一緒だと足手纏いのハンディがありますが?

「それは知らなかったな。オレはお前を足手纏いだと思ったことはないんだが」

ぇ…あ…その、ですから……

「だから照れ隠しに強く抱きしめるなと。…しかし、日本に戻ったらどうするかな」

ああ、リボーンさんは10代目の指導をしないとなりませんものね。オレのことはどうか気にせず。

「馬鹿。んなことできるか。いっそのことお前もあの家に泊まるか?」

いや…それは流石に家人の方の迷惑になるかと……

「………あの家に反対する奴はいないと思うが…」


と、またリボーンが銃を構える。…が、引き金を引く前に獄寺が制して止めた。


「?」

弾が勿体無いです。


と、獄寺は筒を取り出して。

ふっと投げると、それからは煙幕が。

そして煙が晴れたとき、そこに二人の姿はなかった。


二人のマフィア。二人の恋人。二人の行く末はいざどこへ?


++++++++++

その先に悲劇が待ち受けているとしても、今だけは幸せに。前だけを。