『何か』を失ったリボor獄
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『命』を失った『 』


雨が降っていた。

土砂降り雨の中、一人の男が傘も差さずに立っていた。

彼の目の前には、墓標がある。


それは彼の大事な大切な愛しい人の、墓だった。

それは彼の目の前で死んだ、恋人の墓だった。


彼は墓石を優しく撫でる。

そのときの彼の顔は、とても穏やかだった。


「―――」


彼がポツリと言葉を放つ。

それは眠っている恋人の名前だった。


彼は墓石から手を離す。

彼は懐から銃を取り出す。


何の迷いも抱かせない動作で、彼は自分のこめかみに銃口を向けて。そのまま引き金を引いた。

当たり前のように銃声が鳴り、当然のように銃弾が発射されて。


必然のように彼は死んだ。


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『命』を失った『ふたり』