もし獄寺くんがキャバッローネに拾われていたら
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数日後。


「ああ!爆弾がディーノさんの部下たちの上に!!危ない!!」

「あぶねえ!!お前たちっ!!」


ディーノの鞭がしなり、爆弾を掴んで上空へと飛ばす。空の上で爆音が鳴り響き、爆風が周りを一掃した。


「お前ら、大丈夫か!?」

「……ディーノさん…格好いい…」


兄弟子の活躍を間近で見て、ツナが惚ける。

ディーノはその様子に気付かず、部下のもとへと走った。


「隼人!怪我はないか!?」

「おー」


腕を上げ、軽く答えて見せる獄寺。

その姿が、ツナの前に現れる。


「………―――っ」


その姿に、心を奪われた。

今まで周りの大人たちの中におり、しかもその髪を隠すためか帽子を被っていた獄寺だが…今やディーノに引っ張られ、帽子も爆風で飛んでしまっていた。

黒尽くめの部下たちの中、その銀髪はいやがおうにも目を引き、吸い込まれる。

自分と同い年ぐらいだろうか。綺麗な人だ。あの人もディーノさんの部下?

様々な思いがツナの頭を占める中、獄寺が視線に気付いたのかツナを見遣る。

何故か弾む胸。その目に釘付けになり、動けない。


「…あ?何見てんだお前」


しかしその言葉は、非常にドスの効いた恐ろしい声。


「ヒィ!?す、すみません!!」


条件反射で謝るツナに、獄寺はため息を吐きながら懐から煙草を取り出し手慣れた手つきで火を点けた。


「え?た、煙草!?」

「何か文句あんのか?」

「ないですっ!!」


思わず土下座してしまいそうなほど怖かった。


「おいおい隼人。あいつはオレの弟分だぞ。そんなに怖らがせるなって」


苦笑しながらディーノが獄寺に言う。獄寺は煙草をくわえたままディーノを睨めつける。


「は?何お前オレに説教すんの?」

「しませんすいませんでしたーっ!!!」


ディーノは速効で謝った。

ディーノは獄寺に弱かった。


「え…えぇ!?」


いきなり腰が低くなるディーノを見て戸惑うツナ。

紹介された限り、ディーノはマフィアのボスで獄寺はその部下らしい。

しかし今目の前で繰り広げられている光景は、とてもそうとは思えない。


「はっはっは。驚かせたか?あれはいつものことだから、気にしないでくれ」

「あ…えっと、ロマーリオさん。いつものって……あ、もしかして二人は昔馴染みで、心許せる相手…とかですか?だからあんな…」

「ああ、あいつはここ数ヶ月前に入った新人だ」


なんだってー!!


ツナは驚愕した。それでいいのかディーノさん。ああでもなんだか幸せそうだし、いいのかな。

しかし…と、ツナは獄寺を見る。

触れるもの全て切り裂くような、それでいて少しでも触れると砕けてしまうような。

まるで硝子で出来た鋭いナイフのような、そんな印象を持たせる少年。

恐ろしいけど、怖いほど綺麗で、儚い。

そんな感想を抱いていると、ディーノが獄寺から離れやってきた。


「はっはっは。どうだツナ。あいつ美人だろ?」

「ええ………どういった、馴れ初めで?」

「ん?ああ、ある雨の日にな。怪我して倒れていたのをオレが拾ったんだ」

「………拾わなければ、よかったのに」

「え?」

「もし拾わなかったら紆余曲折の末ボンゴレに入ってリボーンが日本まで呼んで命をかけて彼を救うオレにすっごく懐いたかもしれないのに!!」

「そりゃねーだろ」


いつの間にか目の前に来ていた獄寺が呆れたように言葉を吐いた。


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しかし実はそんなことあるのでした。