もし獄寺くんがキャバッローネに拾われていたら
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「お前がディーノが引き入れたっていう、獄寺か」

「…?」


やけに幼い声色で、それでいてやけに大人びた口調の声を聞き。獄寺が辺りを見遣る。

程なくして見つけた声の主は、塀に座っている赤ん坊だった。


「………」


獄寺はしばらく沈黙し…やがて言葉を放つ。


「…あなたは……アルコバレーノのひとり、リボーンさんですか?」

「そうだ。お前の噂は聞いてるぞ。人間爆撃機の悪童獄寺隼人」

「…恐縮です」


リボーンを前にし、途端に姿勢を正して身を固くする獄寺に驚いたのはディーノだ。


「ちょ…おい隼人!お前敬語とか使えたの!?」

「…当たり前だろ!オレをなんだと思ってんだ!!」

「でもオレには使わないじゃんタメ口じゃん!!」

「…オレが敬語を使うのはオレが敵わないと思う相手だけだ!!」


小声でディーノを怒鳴りつける獄寺。リボーンはその様子を見ている。


「…はっす、すみません。リボーンさん」

「いいや、構わねえ。気を楽にしろ」


そう言われても気を楽になど出来るはずもない。

何せ相手は生ける伝説。最強のヒットマン。

その身が得た称号は数多く。倒したと言われる敵は数知れず。

彼から漏れる噂は何も知らずに聞けば到底信じられないものばかり。


「…おい、ディーノ。まさかお前の恩師って……」

「リボーンだけど」

「………いいなあ…」


獄寺は純粋に羨ましがった。

もし、仮に。自分がボンゴレに入っていたとして。例えばこの時期10代目の補佐に就いたとして。リボーンは自分を指導してくれるだろうか。

そう考える獄寺だが、何故かその想像はうまくいかなかった。何故か。何故だろう。


「ん?ボンゴレに入れて欲しかったら、オレが口添えしてやるが?」

「お、おいリボーン!!」

「リボーンさん?」

「ツナの部下は同い年ぐらいが理想だからな。獄寺なら申し分ない」

「………」


突然の申し出に、驚き沈黙する獄寺。

リボーンが言ってることが本気なら、自分はボンゴレファミリーに入ることが出来る。あの、名高いボンゴレに。

それは願ってもないことで、嬉しいことで。

だけど…


「…そうですね。見た限り、ボスのへなちょこ具合は今のところ同等…しかし年齢と育った環境を考えるとボンゴレ10代目の方が将来性はありますね」

「お、おい隼人!!」

「…え?ご、獄寺くん、じゃあ……」


慌て、泣きそうになるディーノとぱあっと顔を輝かせるツナ。

それを気にせず、獄寺は言葉を続ける。


「ですが…」

「ん?」

「すみません。せっかくのご好意ですが……遠慮させてください」

「コネで入るのは気に食わないか?」

「それもあります。ですが…それよりも」


獄寺はちらりと後ろを振り返る。そこにはディーノと、キャバッローネファミリーの仲間。


「あいつらはもう、オレの家族ですから。家族の傍にいさせてください」


獄寺はリボーンに顔を近付け、リボーン以外の誰にも聞こえないよう小声で言う。

はにかむ笑顔を見せる獄寺に、リボーンは笑って頷いた。


「そうか。分かった」

「すみません」

「なに、構わねえ」


そんな微笑ましい会話が繰り広げられてると知らず、ディーノは何故かやきもきしていた。


「…リボーン……オレの隼人を取るなよ…?」

「獄寺くんいいなあ…欲しいなあ……」


あと、ツナは早速腹黒に目覚めていた。


++++++++++

ツナが獄寺くんに目覚めました。