もし獄寺くんがヴァリアーに拾われていたら
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「うっしっし〜☆隼人の唐揚げ貰い!!」

「うお!?オレが大事に取っていた唐揚げが!?」


そんな賑やかな声が響く部屋。食事の場。

今そこに、場違いなほどの殺気が溢れる。


「てめえ…一人二つまでってルッスが言ってただろ!!」

「知らねーもん。だってオレ王子だし」

「もぉ〜、ダメよベル。獄ちゃんのおかず取っちゃあ。じゃあ獄ちゃんにはアタシの唐揚げをあげるわあ〜」

「ルッス…だが、それじゃあルッスの分が……」

「あー!ずりぃ!!なんで隼人だけ!!」

「あんたが獄ちゃんの唐揚げ取るからいけないんでしょうが!!」

「…うっせぇぞおまえらぁあああああああ!!!食事の時ぐらい静かにせんかぁああああああああ!!!」

「お約束だけど、スクアーロの声が一番うるさいよ」

「ボス、オレの唐揚げをどうぞ」

「………」(もぐもぐ)


信じられないかもしれないが、ここはボンゴレの独立暗殺部隊ヴァリアーのアジト。その幹部の食事風景であった。

その光景は意外にも、ものすごく庶民的だった。


「ルッス…本当にいいのか?」

「いいのよ〜獄ちゃんにはいつも手伝ってもらってるし。これぐらいなんてことないわぁ〜」


なお、手伝いというのはヴァリアーらしく暗殺………ではなく、炊事洗濯などの家事である。


「でも食器洗いはもういいわぁ〜」

「わ、わりぃ…」


獄寺は食器を洗おうとすると何故か物凄く手が滑ってしまい、食器を割ってしまうのだ。


「ルッスの唐揚げいいなーいいなー。隼人のくせに生意気だ!!」


ベルが自然な手付きでナイフを獄寺の手の甲に刺す。皮膚が裂かれ肉が顔を覗かせ、血が滴った。


「いてぇ!!」

「もー!こらベルちゃん!!ダメでしょそんなことしたら!!」

「なんでいきなりちゃん付け!?」

「あんたは獄ちゃんより年上で、言わばお兄ちゃんでしょ!?守ってやんなさい!!」

「お…お兄ちゃん?オレが?」

「そうよ!!獄ちゃん大丈夫?手当するからこっち来て」

「分かった」


獄寺は傷口を抑えながらルッスーリアと共に退室した。

それを見ながら、


「お兄ちゃん…オレが……全くしょうがねえなぁ!!お兄ちゃんであるオレが!!隼人を守ってやんないとな!!」


と。ベルはお兄ちゃんという単語にその気になっていた。


「……ベルって、実はかなり単純だよね」


自分の世界に入り、酔っているベルの隣。ベルの皿から唐揚げを取りながらマーモンは小さく呟いた。


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うちのヴァリアーは結構庶民的です。