もし獄寺くんがヴァリアーに拾われていたら
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「兄というなら、スクアーロも言えるのではないか?」

「あん?」


手当てを済ませた獄寺が戻り、食事を再開してからしばらく。レヴィが唐突に言い出した。


「オレが獄寺の兄貴?」


「まあ、確かにそうねえ。同じ銀髪で目付き悪いし」

「……なら、レヴィだって」

「ん?」

「調べてみたところ、獄寺の属性は嵐。雲の属性であるレヴィとは兄弟関係にあるって話だよ」

「なんと!」

「えー…じゃあオレとも兄弟関係にあるってことじゃん。オレはレヴィなんて要らね。隼人にやるわ」

「なんだと!?オレとて貴様など弟と思いたくもないわ!!」

「まあまあ。じゃあマーモンはさしずめ弟かしらね〜」

「お…弟!?」


心外だ。と言わんばかりに思わず席を立つマーモン。

本人曰く、実年齢は結構いっているらしいのだが…今現在の見た目はどこからどう見ても赤ん坊である。


「そして!アタシがみんなのお母さんでボスがお父さん!!ヴァリアー家族が出来たわ。素敵!!」


身をよじらせ喜びを表現するルッスーリア。その様子を、獄寺は惚けながら見ている。


「…ん?獄ちゃんどうかした?」

「どうしたもなにも、こんな家族嫌に決まってるでしょ」

「…ああ、いや、そうじゃなくて……オレ、家族ってのよくわかんねえから…家族って、こういうのなのかなって思って……」


珍しく、弱い笑みを見せる獄寺。

その儚げな様子に、ヴァリアーの面々は未だかつてない感情を胸の内に抱いた。

それを人は庇護欲と呼ぶことを、今まで「弱者は消す」をモットーにしてきた彼らは知らない。

そしてそのモットーに、今例外が生まれた。


「…仕方ないね。どうしても家族ごっこがしたいというのなら、付き合ってあげてもいいよ」

「オレは隼人のお兄ちゃんに任命されてるし〜もう隼人の兄貴だし」

「ふん…仕方ないな。ボスの次ぐらいには、目をかけてやる」

「まあ、ここにいる以上多少の面倒事は向こうからやってくるだろうからな。慣れるまでは手伝ってやる」

「獄ちゃん、アタシのこと本当のママンだと思っていいからねっ!!」

「お?え?み、みんなどうした…?」


次々と自らに投げられる言葉に戸惑う獄寺。黙っているのはザンザスのみだ。


「…ちょっとお父さん。ここはパパも何か言うところよ」

「誰がお父さんだ。オレは今考え事で忙しい」

「考え事?」


疑問符を浮かべるルッスーリアに、あくまでザンザスは静かに…虚空を睨み付けながら答える。


「…隼人が男を連れてきた時の、始末方法について」

「あら♪それは重要ね〜」


今、この時。

獄寺隼人の存在がヴァリアーの秘蔵っ子にしてヴァリアー家族の一人娘の立ち位置が決定した。


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そしてザンザスは頑固親父に決定。