もし獄寺くんがヴァリアーに拾われていたら
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「あ、獄ちゃん丁度良かった。いい時に来てくれたわ」
「ん?ルッスどうしたんだ?」
「お昼ご飯を作ろうと思ったんだけど…食材が足りないのに今気付いたのよ。でも今日のお昼ご飯は下拵えに時間がかかる料理で…」
「分かった。オレが買い物に行ってくる」
「助かるわあ〜じゃあこれメモとお財布。お願いね」
「ああ。いってくる」
「車に気を付けるのよお〜」
ルッスーリアの声援を背に浴びながら、獄寺は買い物に出かけた。
そして獄寺が街に繰り出して実に3分後。
獄寺の容貌に惹かれ、声を掛けようとする男が一人。
「そこのき…」
み、とすべての台詞を言い終わる前に横からナイフの雨が降り注ぎ男を血祭りにあげる。
「ぎゃぁああああああああ!!!」
「オレの隼人に声掛けるとかマジ意味不明だし。確かに隼人は可愛いけど?でも身の程を知れってんだ」
ナイフをお手玉のように回しながらベルが現れ、男の制裁を加える。
更に悲鳴が上がり、獄寺もようやく背後の騒ぎに気付き振り返る。
「ん?」
しかしそこには誰もいない。
「…気のせいか……誰かが喧嘩してる声が聞こえたと思ったんだが」
実際は喧嘩ではなく一方的な殺戮であったが、獄寺に知る由はなく。
路地裏に続く道から赤い染みが流れ込んでくるのにも気にせず、獄寺は踵を返して歩き出した。
そんな惨劇を知らず、獄寺がベルと知らぬうちに別れてから実に5分後。
獄寺の容貌に惹かれ、声を掛けようとする男がまた一人。
「そこのき…」
み。とすべての台詞を言い終わる寸前、周りの景色が歪み目の前の獄寺の姿も恐ろしい化物に変わった。
「!?う、うわ!?」
男は慌てて獄寺を走り抜ける。獄寺はきょとんとした顔をした。
「…?何だあいつら。あんなに急いで…何かあったのか?」
「キミが特に思うことはないよ」
いつの間にか獄寺の肩に乗っていたのはマーモンだ。
「よおマーモン。奇遇だな」
「そうだね。全くその通りだ。僕たちの出会いなんて偶然以外の何者でもないよ」
変な主張をするマーモンだが、獄寺は全く違和感を覚えない。
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