もし獄寺くんがヴァリアーに拾われていたら
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「そうだマーモン。聞いていいか?」

「…なに?」

「…スーパーって、どこにあるんだ?」

「は…?」

「いや、ルッスから買い物を頼まれたのはいいんだけど、オレこの辺りの地理に詳しくなくってよ…」


マーモンは呆れるが、しかしこれは仕方ないことなのだ。

獄寺は行き倒れていた所をザンザスに拾われ、気が付けばヴァリアーアジトにいた。

しかもそれからしばらくの間外出することが出来ず、外に出る機会があったとしてもそれは仕事としてザンザスについていくときだけで。

獄寺にこの近くを探索する機会など今までなかったのだ。


「………仕方ないね。いつもならいくらか貰わないと教えないんだけど…出世払いでいいよ。案内してあげる」

「悪い。頼むわ」


獄寺ははにかみ、マーモンは人知れずフードの中で顔を赤らめた。



「いやー、助かったわマーモン。あとは帰るだけだな」

「ふん。買い物も出来ない………か、かか、家族…だなんて、情けないからねっ!!」

「ん?今なんて言った?」

「なんでもないよ!!」


などという微笑ましい光景を振り回しながら、店を出る二人。

その二人の、目の前に。


「よお。奇遇だな」


ヴァリアーのボスであるザンザスが、スポーツカーを店の真ん前に停めて二人に声をかけた。

思わず固まる獄寺とマーモン。


「………奇遇?」

「奇遇だ。たまたまだ。偶然だ。それはそうと、こんなところでどうしたんだ?」

(ボス…嘘が下手すぎる!!それで騙せているんだと思っているボスが凄いよ奇跡だよ!!)

「え…ええっと、ルッスに買い物を頼まれてたんだけど…」

「買い物はもう終わったのか?」

「お、おう」

「そうか。じゃあ、帰るぞ。乗ってけ」

(ボスが自分の車に他人を乗せるだと!?流石は獄寺!!僕たちの今までの常識が通じない!!)

「い…いいのか?」

「ああ…この辺りは物騒だからな。送ってやる」

(僕が言うのもなんだけど、あんたが一番物騒だよ!!)


というマーモン内心の怒涛の突っ込みは誰の耳にも届かず。

こうして獄寺は誰の魔の手にもあわず無事帰ることができた。


後日、この辺りの街では昼間に銀の髪を持ったそれはそれは美しい幽霊が現れ。

それを見た者は生きては帰れない……という噂話が流れたとか、なんとか。


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ボスは愛娘のことが心配で心配でたまらない様子です。