獄寺くんの日常 秋編
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楽しい一時はあっという間に過ぎ去って。時は既に夜。

ああ、今日が終わって明日一緒に登校したらまたお別れか…それは淋しくて。切ない。

もっとずっと。獄寺くんと一緒にいたかったのに。時間はなんとも意地悪で、時は直ぐに過ぎ去ってしまう。

けれど秋の夜は長いと言われているからまだ粘ろう。

そうとも。もう夜じゃなくてまだ夜。これからを楽しもう。


オレは今獄寺くんを待っている。オレはお風呂上がりで、今獄寺くんはお風呂に入ってて。

獄寺くんが出てきたらどうしようか。何か話をしよう。そうしよう。

ずっとずっと話をしていて。明日の授業の途中で眠たくなるぐらいに夜更かしして。

ああ、それはとても楽しそう。なんなら授業なんて抜け出して二人でサボろうか。


…なんて考えてたら。なんだか眠く、なってきて。

ああ、駄目駄目。まだ眠れない。だって獄寺くんがまだ帰ってきてない。

寝るのなら獄寺くんと一緒に。獄寺くんに抱き付いて。獄寺くんを抱き締めて。そして――


………。


誰かがオレの頭を撫でている。

それはとても心地良くて。それにずっと浸っていたくて。

…でも。そこにいるのは…誰?

重い目蓋を上げると、そこには獄寺くんが、いて…

獄寺くんはオレの頭を撫でてくれてて。でもその目はずっと遠くを見ていて…


「獄寺くん…?どこ…見てるの?」

「あ。起こしちゃいましたか?10代目」

「ん…」

起きたといっても、身体は動かなくて。もう少ししたらまた眠ってしまいそうで。

獄寺くんはオレを笑ったまま見ていて。

「月を、見ていました」

「つ、き――?」

「はい」


そういう獄寺くんの視線を追えば、ああ、確かに。

まん丸で綺麗なお月様が、窓の外で光っていた。

「秋の月って綺麗だって聞きましたけど…本当ですね」

獄寺くんが微笑みながら言ってくる。

うん、確かに綺麗…だけど。

「…獄寺くんのほうが…きれい、かな」

「え?」

獄寺くんが聞き返すも、そのときには既に。オレの意識は深い闇へと堕ちていた。


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ああ、もう、もっとムード出しながら言いたかったな。