無害な吸血鬼リボーンさんサイド
3ページ/全10ページ


「なんでも何も、オレにはお前を攻撃する理由がない」

「………は?」


そいつの心が揺れる。困惑。混乱。不可思議が溢れ出して来る。


「オレがお前に対して何か無礼を働いたのなら、詫びを入れよう。すまなかった」

「………」


そいつの敵意が削げる。動きが止まる。変わりに不思議なものを見るような目で見られた。

ところでオレは、どうしてこいつを怒らせたのだろうか。それが分からない限りまた同じことが繰り返されるだろう。

ふむ。

考える。考える。こいつが来てから何があったか。それに対し、オレがどうしたか。

程なくして、オレはある仮説を思いついた。


「もしかして、お前は心が読めないのか?」


言った途端、返事が返ってきた。そいつの心から。…なるほど。

どうやら、そいつの知る限り心を読める相手はオレだけみたいだった。


「すまない。心を読まないようにしよう」

「…出来るの?」

「出来るだろう、普通」


知らないよ!普通って何だよ!!と言う声が聞こえた。さて、閉じるか。

視覚を塞ぎたいのなら目を瞑ればいいように、それと同じ要領で心を塞ぐ。常に片手を握り拳でいるような不便さはあるが、仕方ないだろう。


「はぁ………何なの、キミ。こんな出鱈目な吸血鬼見たことない」

「吸血鬼?」


どうやらオレは吸血鬼らしい。今初めて知った。


「そうに決まってるでしょ。吸血鬼じゃなかったら、一体何さ」

「いや、知らんが」

「でしょ?」

「お前は吸血鬼なのか?」

「それ以外に何に見える?」


言って、そいつは笑ってみせる。敵意は完全に消えたようだ。


「こんなところでひとりで。一体何をしていたの?」

「いや、何もしていなかったが」

「は?」


そいつが訳が分からないという顔をする。オレは説明する。


「オレは気が付いたらここにいて、ずっと椅子に座っていた。それだけだ」

「なにそれ」


呆れられた。どうやらこれは信じられないようなことらしい。

そいつはため息を吐いた。続いてオレを指差す。


「旅に出なさい」

「旅?」

「そう。こんなところに引きこもってないで、外というものを知ってきなさい」

「外に出る理由がない」

「外に出ない理由だってないでしょ」

「なるほど」


それもそうだ。


++++++++++

リボーンさんが単純…ていうかお前はめだかちゃんか。