無害な吸血鬼リボーンさんサイド
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「なんでも何も、オレにはお前を攻撃する理由がない」
「………は?」
そいつの心が揺れる。困惑。混乱。不可思議が溢れ出して来る。
「オレがお前に対して何か無礼を働いたのなら、詫びを入れよう。すまなかった」
「………」
そいつの敵意が削げる。動きが止まる。変わりに不思議なものを見るような目で見られた。
ところでオレは、どうしてこいつを怒らせたのだろうか。それが分からない限りまた同じことが繰り返されるだろう。
ふむ。
考える。考える。こいつが来てから何があったか。それに対し、オレがどうしたか。
程なくして、オレはある仮説を思いついた。
「もしかして、お前は心が読めないのか?」
言った途端、返事が返ってきた。そいつの心から。…なるほど。
どうやら、そいつの知る限り心を読める相手はオレだけみたいだった。
「すまない。心を読まないようにしよう」
「…出来るの?」
「出来るだろう、普通」
知らないよ!普通って何だよ!!と言う声が聞こえた。さて、閉じるか。
視覚を塞ぎたいのなら目を瞑ればいいように、それと同じ要領で心を塞ぐ。常に片手を握り拳でいるような不便さはあるが、仕方ないだろう。
「はぁ………何なの、キミ。こんな出鱈目な吸血鬼見たことない」
「吸血鬼?」
どうやらオレは吸血鬼らしい。今初めて知った。
「そうに決まってるでしょ。吸血鬼じゃなかったら、一体何さ」
「いや、知らんが」
「でしょ?」
「お前は吸血鬼なのか?」
「それ以外に何に見える?」
言って、そいつは笑ってみせる。敵意は完全に消えたようだ。
「こんなところでひとりで。一体何をしていたの?」
「いや、何もしていなかったが」
「は?」
そいつが訳が分からないという顔をする。オレは説明する。
「オレは気が付いたらここにいて、ずっと椅子に座っていた。それだけだ」
「なにそれ」
呆れられた。どうやらこれは信じられないようなことらしい。
そいつはため息を吐いた。続いてオレを指差す。
「旅に出なさい」
「旅?」
「そう。こんなところに引きこもってないで、外というものを知ってきなさい」
「外に出る理由がない」
「外に出ない理由だってないでしょ」
「なるほど」
それもそうだ。
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リボーンさんが単純…ていうかお前はめだかちゃんか。
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