無害な吸血鬼リボーンさんサイド
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オレは納得し、窓の向こうを見る。

こいつが来た頃は真夜中だったはずだが、気が付けば朝日が昇り日が射していた。

オレは雲雀が入ってきた窓から身を乗り出し、地面に着地する。

靴の下から土と草の感触。風が身を撫で、日がオレを照らす。見上げれば、一面に青い空。そこに白い雲が浮かんでる。

あの場所では得られなかったものが、ここに山ほどあった。


「ちょっと、大丈夫なの?」


オレが外の世界を見ていると、いつの間に下りてきたのかそいつが隣にいた。はて。大丈夫、とは。


「日の光は吸血鬼の天敵だよ」

「そうなのか」


初めて知った。


「お前は平気そうだが?」

「僕は特別なんだよ」

「そうなのか。なら、オレもその特別とやらかも知れん」


そいつはまた呆れた。

オレは空を見上げる。

薄い青とも、水色とも取れない色が広がっている。遠くになるにつれて白くなっていく。頭上には月。反対側には太陽。

綺麗だった。


「外というものはいいものだな」

「そう。いいものなんだよ」


そいつは満足気に言った。

旅か。それも悪くない。

旅に出る理由は特にないが、こいつが言ったとおり旅に出ない理由もない。あの場所に留まらなければいけない理由もない。

それに、こいつは善意でそう言ったのだ。ならばそれを無碍に断るのも気が進まない。


「旅に出るか」

「それがいいよ」


風を切る音。

一歩前に進み出ると、オレの真後ろをトンファーが横切った。


「…今度はオレはなんで攻撃されたんだ?」

「キミの血。飲ませてよ」

「血?」


血。血か。オレの血が飲みたいと。なるほど。それは分かった。


「オレの血が飲みたいのと、オレを攻撃するのと何の関係があるんだ?」

「噛み付いて血を啜るなんて性に合わなくてね。いつもこうして血を飲んでるの」


そう言うそいつのトンファーにはいつしか棘が生えていた。

なるほど。あれで肌を切り裂いて血を浴びて吸収するわけか。変わってるな。


「オレの血が飲みたいのなら、やろうか?」


オレは自分の手首に手を掛ける。しかしそいつはそれを遮った。


「駄目駄目。僕の手でやるのがいいんじゃない」

「そういうもんか」


オレにはよく分からないが、そういうものらしい。


「じゃあ、オレはもう行こう」

「そう。じゃあ、また、縁があったら。そのときは絶対にキミの血飲んでみせるから」

「分かった」

「楽しみにしてるから。…そうそう、キミ、名前は?僕は雲雀っていうんだけど」

「オレか?オレはリボーンだ」


言って、そこで初めてオレは自分の名前を知った。

そうか。オレはリボーンというのか。


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リボーンさんの旅の始まり。