無害な吸血鬼リボーンさんサイド
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そして次の日。

獄寺がいなくなったという情報が入った。

オレは直ぐに獄寺を探し、城にいるだろうと断定した。そして、そこには骸もいると分かった。何故分かったかと問われると、あれだ。オレには視界を広げた。としか言いようがない。

獄寺と骸が傍にいる。

オレは急いで城へと向かった。

恐らく骸はまた獄寺を殺そうとするだろう。それだけは避けなければならない。

城が見える。獄寺と骸がいる場所を見遣る。

入り口から入って行ったのでは間に合わない。オレは窓に飛び込んだ。

窓を突き破り、視界に入った獄寺を抱きとめる。それと同時に骸の槍を受け止める。

ああ、間に合った。

また獄寺を傷つけずに済んだ。

オレは一息吐き、骸に目を向けた。


「またお前か。獄寺に手を出すのはやめてもらおう」


言いながら、どこか違和感を感じた。目の前にいるはずの骸がそこにいないような。

その違和感を探ろうとしたところで、視線を感じた。獄寺だ。困惑している。どうしてここにとその目が言っていた。

どうしても何も、決まっている。


「屋敷の人間にお前が消えたと聞いて、探しに来た」


オレの言葉を聞いて、獄寺が更に困惑する。…何故だ。

すると後ろから骸の声が聞こえた。違和感の正体はこれか。目の前は偽者。後ろが本物。

振るわれる槍を避けようとしたところで、骸が冷たい声を発した。


「避ければその子供を殺します」


その子供。獄寺のことか。

オレは動きを止めた。すると槍が狙いを外さずオレを貫く。

ふむ。これは痛いな。

獄寺のかすれた声が聞こえる。

大丈夫だと告げようとするが、それより前に骸が口を開く。


「クハハ。そんな顔しなくても、次はあなたの番ですよ」


それはもしかして獄寺のことか。

オレが避けても避けなくても殺すつもりだったんだな。

だが獄寺に手を出させるわけにはいかない。


「だから、獄寺に手を出すな」

「リボーンさん!」


獄寺が驚いた顔でオレを見る。


「大丈夫なんですか!?」

「ああ。大事ない」


そう言えば、骸が顔をしかめる。


「馬鹿な…化け物ですか、あなたは」

「ただの吸血鬼だ」


って、雲雀が言ってた。


「吸血鬼とて、心臓を刺されたら死にます。何故死なない」

「何故も何も、心臓を刺された程度で死ぬわけないだろ」


平然とそう言ったが、獄寺の目がそれは違うと告げていた。

え?そうなのか?

なんだ、みんな結構軟弱なんだな。じゃあ腕を切られても死ぬのかもな。

それはそうと、この空気どうするか。どうにかしないとな。


「…ああ、流石に痛いぞ」

「痛いで済むんですか!?」


突っ込まれた。無視しよう。


「まぁ、それはともかくだ」


逆流して口から零れる血が不味いことこの上ない。

服に穴が開くし、痛いし、獄寺を傷つけられそうになるしで気分が悪い。

オレは骸の槍に目をやる。


こいつだ。

こいつが全ての元凶に違いない。


オレは骸の槍を取り上げ、へし折った。頼まれても元通りにはしない。

オレはへし折った槍をその場に捨てると、また骸の首根っこを掴んだ。


「出直してこい」


別に来なくてもいいが。と思いつつオレは今度は割と本気で骸を分投げた。骸は海の向こうに消えた。

続いて、獄寺を見る。骸に何もされなかっただろうか。


「獄寺、無事か?」

「は、はい…」


そう言うが、獄寺の顔色はすこぶる悪い。なにかショックなことでもあったのだろうか。

獄寺が泣きそうな顔で言う。


「リボーンさん…どうしてオレなんかを…」

「どうしても何も、家族が危険な目にあってるんだ。そりゃ助けるだろう」


全く、一体何を言ってるんだこいつは。

多少呆れていると、獄寺は呆然としながらオレを見上げていた。

………あれ?

この反応は…この反応を見る限りは…もしかして。


「…お前はオレを…家族と思ってなかったか?」


だとしたらオレはずっと一人相撲をしていたことになるな。

一応獄寺の家族として頑張っていたつもりだったんだが。

ああ、でも、あれだな。獄寺は家族がほしいと言ったが、オレに家族になってほしいとは言ってなかったな。獄寺にも選ぶ権利はある。

しかし…まぁ…多少、気が沈むな。ああ、これが落ち込む、という奴か。