獄寺くんの長い長い病欠
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「ん………」
目が、覚める。
ぼんやりと意識が覚醒する。
ゆっくりと身を起こして、ゆっくりと周りを見て、ゆっくりと状況を確認する。
そこには―――
「……不味いね。レトルトだからって、馬鹿にしてない?」
「うるせぇ!文句言うくらいなら喰うな!!」
「ハヤト兄ぃ〜ぼくも食べたーい。食べさせてー」
「ああもう、仕方ねぇな…ほら、口開けろ」
「獄寺獄寺ー、オレにも食べさせてくれよ。ほら、あ〜ん」
「気持ち悪いこと言ってんじゃねぇ!お前は帰れ!!」
「極限だ!こんなもの気合でどうにでもなる!オレは帰る!!」
「お前は重症なんだから寝てろ芝生!!」
「スモーキーン。氷が溶けちまったんだけど」
「ああっ!?…ちょっと待ってろ!すぐ代えを持ってくる」
「獄ちゃ〜ん」
「なんだ!!」
「…呼んでみただけ〜」
「果てろ!!」
……そこには何故かみんなの世話をする獄寺の姿があった。
「10代目!お気付きになられましたか!!」
ベッドから起き上がったツナを見て、獄寺は一目散に飛んでくる。
「獄寺くん…これは……」
「申し訳ありません!オレの風邪を10代目に移してしまい……」
ああなるほどとツナは頷く。この身体のだるさは彼の風邪なのか。
「…気にしないで獄寺くん。それよりも獄寺くんの方はもう大丈夫なの?」
「は、はい!お蔭様ですっかり!」
「そ…よかった」
ツナは獄寺を抱きしめた。
「え…じゅ、10代目!?」
ツナは獄寺の頭を撫でながら、獄寺にだけ聞こえるよう、耳元で小さく囁いた。
「も…無理、しないでね?」
「は…はい……」
獄寺は顔を耳まで真っ赤にして、ツナに負けないくらい小さな声で返答した。
その背後では―――
「………完全に僕たちのこと忘れてるよね、彼」
「ああ……」
深い深い切望の眼差しが、熱い逢瀬を交わしている二人に向けられていた。
これがただの一般人なら、二人を見守っただろう。けれど、ここにいるのは彼を、獄寺を狙っている者たち。
「……ちょっと、粥の追加を待ってるんだけど?」
「うわっ!?ひ、雲雀!?分かった、待ってろ!」
雲雀の声に、獄寺は慌ててツナから離れ、台所へと走っていく。
「獄寺〜オレの分もー」
「あぁっ!?作ってやるから後は勝手に食え!!」
「ハヤト兄〜、ぼくすりおろしりんご食べたーい」
「あー…分かった、でもあとでな!」
「すも〜き〜ん、こーおーりー」
「ちったぁ我慢しやがれ!黙って寝てろ!!」
「極限だ!極限だぁ!!」
「落ち着け芝生!目がやばいぞ!!救急車が必要か!?」
「獄ちゃ〜ん」
「今度はなんだ!」
「オレと付き合って〜☆」
「死ねーっ!!」
「…獄寺くん」
「はいなんでしょう10代目!!」
「……最後は、オレのところに戻ってきてね?」
「え…あ…はい」
みんなに呼ばれ、忙しなく動き回る獄寺。
それを見て、ツナはなんとなく連想するものがあったが……
「……てめぇら、病み上がりの獄寺をあんま回すな。獄寺が壊れるだろうが」
黙っておこうと思った矢先、いきなりリボーンが言い放ちやがった。
案の定、そこには赤面した獄寺が硬直していた。
「リボーン言うなよそういうこと!」
ツナの突っ込みが、今度こそ部屋全体に広がった。
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ひとまず、全員、今すぐ病院へ!!
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