命の代価
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たとえば、お前の命を救えるとしたら。

どれだけの代価が必要になるだろう。


お前は弱いくせに前線に立って。戦場の真ん中に飛び込んで。

いつも意識不明の重体、生死の境を彷徨う状態で帰ってきて。

その度復活してはまた戦場に行き、抗争に出向き、命を狙われ傷を負う。

お前は拷問を受けても殺されそうになっても怯まない。


相手が誰であれ毅然と立ち向かう姿は、そりゃあ映えるだろうよ。

お前は"10代目の右腕"なんだから、そういう役回りも求められるんだろうさ。


だが…


そんな生き方してたらお前、すぐに死んじまうぞ。

あいつらは馬鹿みたいに楽観的だから、今まで大丈夫だったから今回も大丈夫だろうなんて馬鹿げたこと考えてるんだろうけど。

オレから見れば、どうしてお前が未だに生きてるのが不思議なぐらいだ。


自ら死地に向かい、自分より強い相手に立ち向かい、真っ直ぐに正面からぶつかっていく。

本当は死にたいんじゃないかと疑うほどお前は敵地に突っ込み、暴れ回る。


…お前なあ。

なんだその生き方は。

断言してやるよ。

お前は早死にする。

誰かがフォローに回らない限りは。


一応、オレが近くにいるときはフォローしてやってるが。

いつでもお前の傍にいれるわけもなし。


…たとえば、お前の命を救えるとしたら。

どれだけの代価が必要になるだろう。


ある晴れた日のお前の命の代価。銃弾三発。

ある雨の日のお前の命の代価。多量の血液。

ある曇りの日のお前の命の代価。帽子一つ。


ある、乾いた風の日のお前の命の代価。

それは―――――


お前が驚いた顔でオレを見ている。

確かにオレの柄じゃないかも知れないが。

そんなに驚くことはないだろう。


今回のお前の命の代価。

命一つ。


それはオレの命で支払おう。

お前が何か言ってるが、オレにはもう聞こえない。

世界が暗くなる中、オレの視界に映るはお前の泣いている姿。

…そんなものを見るために、この命を散らすわけじゃないんだけどな。


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さて、あとのことは任せたぞ、お前ら。