第三者目線
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正直に話すのなら。
オレは、彼の人の話を聞かないところがあまり好きではなかった。
周りと歩調を合わせられないところも。
空気を読めないところも。
常識を知らないところも。
オレはあまり好きではなかった。
しかも本人としてはきちんと出来ているつもりらしかったから、なおさら。
だけど。
それでも彼は、決して悪気があるわけではなかったし、悪い人でもなかった。
勘違いから始まったとはいえ、オレを慕ってくれた。
オレが馬鹿にされたら、怒ってくれた。
オレが怪我をしたら、心配してくれた。
オレを庇って、オレの代わりに怪我をしたこともある。
それに。
オレと一緒に登校してくれた。
オレと一緒にご飯を食べてくれた。
オレと一緒に帰ってくれた。
オレと一緒に宿題をしてくれた。
オレと一緒にいてくれて。
オレと一緒に笑ってくれた。
これが日常の人から見れば、何を当たり前のことを。と思ったかもしれない。
だけど、それまでオレはずっと一人だった。
だから最初は分からなかった。
一人ではないということの、有り難味が。
他愛のない話が出来るということが。
「また明日」を言えるということが。
友というものが、どういうものなのか。
そう。
彼は、オレの友達だった。
とても大切な人だった。
だから。
出来れば、幸せになってほしいと、願ってた。
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