第三者目線
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彼はいつも通りではなかった。

彼はただ、昔の自分を真似していただけだったんだ。

まだあいつが生きていた頃の自分を。


あいつが死んで、オレは一体何を安心していたのだろう。

彼がもう傷付かないで済むなんて、そんな馬鹿な。

少し冷たくされるだけで傷付く彼が、あいつの死に何の傷も負わないわけがないのに。


きっと彼が受けた衝撃は誰よりも強くて。

その衝撃は、彼の心を壊してしまったんだ。


あいつが死んだ時。あいつの死を知ったとき。彼もまた死んだんだ。


心が死ねば、やがて身体も衰える。

だから本来避けれるはずの攻撃でさえ喰らってしまった。

…あるいは、死んだ心に身体が合わせたのかもしれない。

今やっと、彼は正しい姿になれたのかもしれない。

オレは彼を抱きしめる。


「…もういいよ。休みなよ」


小さく、そう呟く。

彼はもう何も言わない。

ただ浅い呼吸が、心音が。だんだん遠くなっていく。体温が下がっていく。

それを感じながら、オレは遥か昔、あいつに言われたことを思い出していた。


いいか、あいつは弱い。だからお前があいつを守ってやるんだぞ。


オレはそれを聞いたとき、お前が守れよと思ったんだけど。あいつは自分の命が長くないことを知っていたんだろう。

だからオレに託した。

自分に出来ないことを、オレに頼んだ。

なのに結果が、このざま。


「…ごめん」


動かなくなり、力の抜けた彼に。死んだあいつにそう呟く。


…願わくば。

死後の世界があるとして。

そこで彼等が出会えるとして。

せめてそこでは、幸せになれますように。


オレの大切な友達が、好きな人と共にいても傷付かず、心の底から笑えますように。


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向こうではあの二人が、結ばれますように。