縁の下の苦労持ち
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暗い闇が広がっていた。

音はなく。何もなく。

どこまでも続くような黒が続いていた。

そんな場所で、何故かオレは酷い不安感に襲われていた。


動悸は激しく。

喉も唇もからからに渇いていて。

嫌な汗が流れ、身体は燃えてるようにも凍り付いているようにも感じる。


目は見開かれ、手足は震え、心が悲鳴を上げていた。

そして、その場所に縫い付けられてしまったかのように一歩たりとも動けないでいた。


…どれだけ、その場所にいたのだろうか。

不意に、目の前に気配が生まれた。

一体いつからそこにいたのだろうか。

そこにいたのは、黒ずくめの小柄な少年だった。

俯いていることと、目深く被られた帽子でその人の顔は見えないけど。その人は間違いなくあの人だろう。


オレの先生で。

憧れの人。

誰よりも信頼していて。

何よりも頼もしい人のはずなのに。

オレの心に芽生えている不安感はまったく拭えなかった。

それどころか、ますます増えたような。


身体から血の気が引き、震えが酷くなる。

何故か、オレはこの人に恐怖していた。


…と、気付く。


帽子に何か付着している。

赤い液体。命の源。それは血液。

それがべっとりと、帽子に付いていた。

誰の血だろう。

目の前の、この人は怪我を負ってない。

帽子に付いてる血は乾いておらず、帽子に染みきれず滴り落ち、今さっき付着したばかりだと言う事を告げていた。


…ふと、鋭い痛みが指先に走った。

その痛みでか、身体が自由になる。

指を見ると、赤い血が流れていた。

それに意識を向けると、目の前の気配が動く。

その人の手には拳銃が。

銃口はオレに向けられ。

あなたは顔を上げた。


「―――――…」