縁の下の苦労持ち
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「あれ?リボーンさっき向こうの通路にいたのに…なんでこっちにいるの?」
「小僧…?あれ?訓練室にいなかったか?あれ?」
「赤ん坊…キミ分身の術でも使えるの?それとも瞬間移動?あるいは双子だとか?」
会う奴会う奴首を傾げる。
それはそうだろう。オレもその気持ちは体験した。
リボーンさんは呆れ顔、あるいは怪訝顔で夢でも見たんだろとか、疲れてるんじゃないかとか。そう言ってたけど。
そんなことない。あるはずがない。
これがオレだけならまだしも、他の奴も見ているのに。
全員が同じ時間、同じ場所でもない。日付も場所もバラバラだ。
オレはまず、幻術使いを疑った。
しかし骸もクロームも…果てはヴァリアーまで赴きフランなる人物にまで確認したが、みな首を横に振った。ちなみにマーモンは不在だった。
あいつらによると幻術を使った気配はないらしい。…となると幻術師は白なのだろうか。
あいつらが結託して嘘を付いている可能性もあるが、そこまで疑ってたら何も出来ない。信じることにする。
なら…幻術じゃないとすれば……あのリボーンさんは…?
考えながら歩いていると、曲がり角で何かとぶつかった。
それは小柄な…というより子供で。黒尽くめで。っていうかリボーンさんで。
「うわ!?り、リボーンさんすみません!!」
「ん?よお獄寺」
出会い頭にぶつかったことも気にした様子はなくリボーンさんは軽く声を掛けてくる。
「………」
「ん?どうした獄寺」
「い、いえ…」
もうひとりのリボーンさんが現れてから暫く経ち、オレはすっかりリボーンさんに対して疑心暗鬼になってしまった。
…このリボーンさんは本物っぽいな……
偽物…というか、もうひとりのリボーンさんは声を掛けてくることはない。そもそも見えるのは後ろ姿とか遠目とかだけでここまで近く接することもない。
…今のところは、ではあるが。
「そういやお前、オレについて聞き回ってるらしいな」
「リボーンさんのことと言いますか…」
なんと言えばいいのか…言葉に困る。
「他人の空似かなにかだろ」
「リボーンさんのような体格の持ち主はリボーンさんしかいませんよ」
「子供が紛れ込んでるだけだろ」
「…スーツを着込んだ子供がマフィアのアジトにですか?」
それはそれで不味い話だ。そうだとしたら恐らくそいつは鉄砲玉としてどこからか派遣された少年兵だろう。いや違うだろうけど。前提が。
「そんなに気になるのか?」
「ええ」
明らかにいるもうひとりのリボーンさん。
今のところ害はないが……どうにも気になる。
「まあオレが気になるのもいいんだが、」
「いえ、オレが気になるのはリボーンさんではなく」
ん?あれ?リボーンさんでいいのか?どう言えばいいんだろう。
「もう少し自分の周りのことも気にするんだな」
「…はい?」
ほれ、とリボーンさんが何かを手渡してくれる。それは…
「…あれ?オレのナイフ?」
「落ちてたぞ」
「え!?」
慌てて懐に手をやるが…ない。確かに仕舞ったはずなのに。冷や汗が流れる。
「す、すいません…」
「ああ」
オレは受け取ったナイフをポケットに入れる。
…確かにリボーンさんの言う通り、自分の身の回りのことも注意しなければいけないな。
オレはリボーンさんと別れた。
その日、もうひとりのリボーンさんは見掛けなかった。
そして。
部屋に戻り、夜も深けオレは眠りに付き。
目が覚めると、そこには―――――
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