縁の下の苦労持ち
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……………。

これは…これって……

いやいやまさか。

そんなまさか。

そんなことあるはずない。

あるはずがない。


リボーンさんが、オレを思ってるだなんて。


そんなわけがない。

そんなわけが―――――


「獄寺」

「は、はい!!」


思わず声が上擦ってしまった。

しかしリボーンさんはそんなオレに気付くことなく言葉を続ける。


「これは…何なんだろうな」

「…は、はい?」

「あいつがお前を殺そうとしたとき…あいつがお前に触れたとき。オレは自分でも戸惑うほど怒った」

「え…」

「確かに教え子であるお前を手に掛けられそうになったら怒りぐらい覚えるだろう。だが…あの感情はそれだけとは思いにくい」

「………」


いや…ですから、リボーンさん…

そんなに期待させるようなことを言わないで下さいよ。

オレはあなたをとっくの昔に諦めて、今の関係で満足すると決めたのに。


なのに―――


「これは一体どういうことだ?どう考える?獄寺」

「………そう、ですね…」


オレになんて言えって?オレにどうしろって言うんだ?

それは恋ですよと言って結ばれる?

そんなの何でもないですよと言って関係維持?


そんなのオレが決めれるかよ。


「…それは…その感情の答えは、ご自身で導き出すものですよ。リボーンさん」

「ん?」

「オレに聞かれても、分かりません」

「そうか…そうだな、オレの気持ちがお前に分かるわけがないか…すまない、今までにない体験だったから少し混乱した」


オレは今でもとてつもなく混乱しておりますよリボーンさん。

………。


「でも、」

「ん?」

「そのリボーンさんの戸惑うほどの感情が…オレに向けられているとするならば、オレともう少し触れ合えば少しは何かが分かるかも知れません」

「…なるほど。道理だな」


…あのリボーンさんにオレがレクチャーしている…?

ふと冷静になって今の現状を見てみたらとんでもないことになっていた。


「なら今度一緒に食事にでも行くか。あいつがお前に迷惑掛けたしな。その詫びだ」

「楽しみにしています。…その前にリボーンさんの怪我の手当てですが」


ちなみにオレの手当てはリボーンさんが済ましてしまった。オレはいいと言ったのに、自分を手当てして下さいと言ったのに。


「医務室に行きましょう。オレが診ますよ」

「…そうだな。頼む」


リボーンさんと二人、医務室まで進む。


さて、オレも腹を括らねば。


リボーンさんが自分の感情にどんな答えを出すかはまだ分からないけど。

どんな答えであれ、オレはオレで真摯に向き合おう。

…あのリボーンさんに、リボーンさんを頼むとも言われたし。


リボーンさんと二人、通路を進む。

あの日、リボーンさんからナイフを渡された廊下を通り過ぎる。

もうひとりのリボーンさんが苦笑しながらこちらを見ている気がした。


++++++++++

もうひとりのリボーンさんとはもうひとりのリボーンさんとして、一度話し合いたかったな。