ツナ父奮闘記

ツナ父奮闘記
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ここは並盛学校。ここにはとてもとても愛らしい、みんなのアイドルがいます。


「今日もいい天気ですね。10代目」

「そうだね。午後は少しばてるかもね」


セーラー服とブレザーを着た少年少女が歩いてきます。

セーラー服の少女の名は獄寺隼人。男みたいな名前ですが気にしてはいけません。

少女、と描写していますが、性別はまぁ男でもいいです。セーラー服を着ていることが重要なんです。(末期)

ブレザーの少年の名は沢田綱吉。なんと獄寺くんの父親なのです。

でも同い年です。名字も違います。呼ぶときも「獄寺くん」です。

いろいろ突っ込み所満載です。でも気にしない。

ついでに獄寺くんも父親であるはずのツナを「10代目」と呼びます。


気にしない。


獄寺くんはツナが大好きです。

ツナも獄寺くんが大好きです。


つまり、二人は両想いです。


しかし悲しきかな。二人の関係は父と娘です。

そしてもう一つ悲しいことがあります。

それは……獄寺くんが学園のアイドルだと言うことです。


「獄寺ーっ」


やたらと元気な声が聞こえてきます。獄寺くんはぽけーっと、ツナは警戒したように振り向きました。


「おっはよぉぉおおおおぉう!!!」


でも、振り向いたときにはもう遅すぎました。

声の主は、まるで獄寺くんに抱きつくかのように走ってきました。

けれども、声の主は物凄く体格のいい持ち主で。

それに比べて、獄寺くんの体格は物凄く華奢で。

その結果。


ズッシャアアアァアアアァアッ


獄寺くんの身体は、まるで鞠のように吹っ飛んでしまいました。


「うわーっ!ご、獄寺くんっ!?」

「あー…わりぃわりぃ」

「一体何するんだよ山本っ!!」


獄寺くんにまるで魔獣のように抱きついてきたのは山本武くん。

ツナと獄寺くんのクラスメイトで友達です。

しかも野球部のエースでみんなからの信頼も厚く、なんとファンクラブまであります。

でもその実態は、学園のアイドル・獄寺くんを狙う、ツナにとっては害虫のような存在です。


「……まったく、女の子はもっと丁寧に扱うものだよ?」

「雲雀さんっ!?」


言いながらやってきたのは、雲雀恭弥先輩です。

とりあえず先輩です。でも年齢は分かりません。永遠の先輩です。

そしてブレザー制服の学校で学ランを着ている痛い人です。

この学園の風紀委員長で、とても偉くて怖い人です。

でも、ツナにとってはやっぱり獄寺くんを狙っている害虫みたいな存在でしかありません。

雲雀先輩は獄寺くんをお姫さま抱っこしながら現れました。

獄寺くんは気絶しているのかぴくりとも動きません。大変です。


「ご、獄寺くんっ」


ツナは一目散に獄寺くんのところへと駆け寄ります。

ツナの声に反応してか、獄寺くんは薄っすらと意識を取り戻しました。


「ん……ぅ………10、代目……?」

「ああっよかった獄寺くんっ!無事!?怪我はない!?気分はどう!?」


しばらくぼーっとしていた獄寺くんでしたが、やがて自分の状況に気付きました。


「雲雀…?なんでここに……?」

「なんでもなにも、キミが僕の方へと飛び込んできたのさ。流石に驚いたよ」


それを聞いて獄寺くんは自分の身に何が起きたのかを知りました。そして原因が誰なのかも。


「ったく…山本。あんまり激しいスキンシップは嫌われるぞ?」

「獄寺だけだって」


武くんの本気の声にも、獄寺くんは冗談だと思って疑いません。


「雲雀…もう、平気だから降ろして」

「だめだよ。一応検査しとかないと……とりあえず、応接間へ行こうか」


獄寺くんの返答を待たずに、雲雀先輩の足は応接間へと伸びていきます。


「雲雀さん、応接間は検査するところではありませんから!!」


慌ててツナは雲雀先輩を追いかけます。お父さんは大変です。


「そうだぞ先輩。検査なら部室だって出来るから………とりあえず獄寺を返してくれねぇ?」


部室だって検査するところじゃねぇし、獄寺くんはお前のものでもねぇし、ていうか、そもそもお前が元凶だろうがっ


いろいろ突っ込み所満載で、しかも当たり前のように着いてくる武くんにツナは正直何か黒いものを覚えましたが表には出しませんでした。

とりあえずツナは武くんと雲雀先輩が潰しあってくれないかなと切実に願っているからです。黒いですね。